建部綾足の俳諧、和歌、小説、国学、絵画等の諸領域における業績は、従来、その領域ごとに限って検討されるのを常としてきた。すなわち、俳諧を検討するときには、絵画の業績が顧慮されることはなかった。しかし例えば、絵画と俳諧・片歌・和歌等の詩歌が一体になった画賛を綾足は沢山残しており、綾足作品においては絵画研究と詩歌研究は不可分である。 今回の研究では、意図的に複数の領域にまたがる研究的な視座から、綾足を論じた。例えば、絵画と俳諧が交差する俳画、小説と国学研究が交差する和文読本『西山物語』などを取り上げ、複数の領域を自由に行き来する綾足精神の有りようを、この時期の文人の一典型として明らかにした。
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