研究課題/領域番号 |
21K00294
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研究機関 | 静岡英和学院大学 |
研究代表者 |
畑 恵里子 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 教授 (50581229)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 近世浦島享受 / 身体 / 霊力 / 巫女 / 異界 / 海洋 / 地域伝承 |
研究実績の概要 |
本年度は、まず丹後独自の近世浦島伝説を分析した。具体的には舞鶴市糸井文庫蔵『水江浦島 対紫雲筺』を取り上げて、異界に住まう巫女的存在としての乙姫の霊力の様相と、その身体の変容とについて、王朝の物語展開を踏まえて考察を行った。本作品は、いわゆる生まれ変わりや輪廻転生にも派生しうる内容である。草双紙の一種である黒本のため、叙述だけではなく、挿絵の表現にも着目した。 近世浦島享受の一端として、舞鶴市糸井文庫蔵『絵本龍宮遊』を対象として、叙述における言語表現や祝祭性を分析した。浦島伝説は、近世に至ると歌舞伎や洒落などの言語遊戯と関わってくることを、本作品の語彙から分析した。そして、老齢を得るという当初の浦島伝説の特徴が、中世の鶴亀の縁起物から、長寿による祝祭性となり、さらに結婚や新年などの他のハレの要素とも結びついて、作品の随所で押し出されるようになってくること、よって、老死や悔恨による上代の本伝説からは相当変質していることを指摘した。 基礎的作業の一環として、立命館大学アート・リサーチセンター(略称ARC)のDB「糸井文庫閲覧システム」へ翻刻情報を入力して、情報の充実をはかった。糸井文庫とは京都府舞鶴市文化財であり、丹後地域を対象とする古典作品が主に収集されている。 研究者のみならず一般の人々に向けて研究成果を公開するため、研究公開用HPの開設を行った。公開期間は本プロジェクト採択終了までの予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英訳された日本古典作品の語彙の使用傾向を分析する必要があり、時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
原則として予定通りの方向で計画を推進する。よって、本事業2年目の主軸であるパネルディスカッションの開催に向けて、関係各所と調整を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の対応のため、海外を含む出張が、ハイブリッド開催など変更となった。よって、海外の大学に在籍する研究者を含む、翌年度のパネルディスカッション開催のための経費へ充当する。
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