• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

蕉風復興運動の総合的研究-天明期・化政期における尾張俳壇の資料集成をもとに

研究課題

研究課題/領域番号 21K00295
研究機関金城学院大学

研究代表者

寺島 徹  金城学院大学, 人間科学部, 教授 (30410880)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード暁台 / 桂葉 / 秋田千句 / 月渓
研究実績の概要

本年度は、中興期俳諧、化政期俳諧における蕉風復興運動の展開に関する調査、分析と、中興期の秋田俳壇を相対化するために重要な初期俳諧の秋田俳書の調査、分析を行った。仙台、秋田、上方への出張による書誌的な調査研究をもとに、蕪村、几董、月渓、暁台の新たな書簡、句幅、および延宝期の新出俳書(秋田千句)の書誌調査、翻刻などを進めることができた。蕪村、几董、月渓の天明2年における書簡については、秋の俳文学会全国大会のシンポジウム「俳諧資料の保存と活用」(10月23日)において、パネラーとして、発表、紹介した。また、福島の松江が、士朗の序を利用して『鹿島詣』を喧伝しようとした可能性を指摘し、芭蕉顕彰運動の伝播の力の一端を明らかにした。とくに、松江に唆されただけでなく、遺物に突き動かされて、日向の無名といってよい俳人が『ひとつ合器』という50丁にもわたる俳書を作る過程などを調査・分析した。
『秋田千句』は、寛文から元禄期にかけ秋田俳壇を牽引した平賀桂葉の撰となる、新出と思われる版本『秋田千句』(延宝八年刊)である。季吟と桂葉、里鶯の関係性を新たな視点から指摘することができた。ツレとなる発句撰集『八束穂集』との関係も明らかにすることができ、内容についても、『秋田千句』と『阿蘭陀丸二番船』の和歌の会釈のしかたの比較を通して、同書が、貞門の色彩を残しながらも、談林調も摂取していたことを明らかにした。この時代の地方俳書の一側面を指摘するとともに、秋田俳壇と中央俳壇とのつながりの一部を明らかにすることができたと考えられる。
なお、国語教育への応用という面でも、伝統的文化教材のICT教育への導入を検証し、現場の教員と連携して、学術論文に発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

芭蕉百回忌以後、芭蕉を顕彰する活動が盛んになったが、その芭蕉への崇敬の念、憧憬の念、遺物とされる物への思いは、当時の俳人たちが活動を続ける上での原動力となっていた。俳文学会でのシンポジウムを見すえた調査において、真彦編・松江序『ひとつ合器』、後半で、春坡編『小艸』という二つの芭蕉顕彰に関わる俳書の生成事例を明らかにしようと、東北地方に赴き、調査、分析を行った。また、仙台市の旧家の方ならびに、仙台市の元博物館長より、道彦の供養碑、遺品の硯等のヒアリング調査も行い、今後の、仙台地方に関する調査について、暁台撰『みちのく』等の所蔵の可能性のある新たな文庫の調査も検討することとなった。夏には、秋田の調査も進め、明徳館において、秋田の五明関係の自筆資料の調査を行い、『秋田千句』について、二次資料の収集も行っている。『秋田千句』のテキストの翻刻を進め、語彙体系化のマクロを構築し、付合語彙の紐付け作業・分析も進めた。期間中に、クエリの改良も行い、今後の継続的な付合語彙の解析が重点的に行えるように改善し調査の体制を整えている。

今後の研究の推進方策

江戸中期の俳諧調査にあたっては、中興期の俳人の真蹟、稿本、書簡などの典籍の一次資料を収集し、翻刻(解読)することが必要である。2022年度までの仙台の調査で得た、几董、月渓、暁台関係の資料の翻刻、作品分析を通して、研究会、全国大会で順次発表を行い、論文、資料集として公表していく予定である。『秋田千句』の下巻の翻刻も行う予定である。また、マクロのソフト改良をもとに、暁台連句、連句評点集などを順次語彙分析できるよう紐付け作業を進めてゆきたい。暁台の連句における式目重視のあり方についても調査・分析を進めていきたい。
国語教育への応用的な調査も継続してゆきたい。天明、化政期の俳諧は、蕪村、一茶に比較し、その周辺の俳人たちの発句、連句は、過去の研究者たちによって、版本の個人句集、各種七部集・類題発句集などのアンソロジーから恣意的に数句拾い出され、解釈本に紹介されることが多くみられた。資料整理を進める中で、従来、見過ごされた俳人たちの佳句を拾い出すことが可能になると考えられる。基礎研究の中から抽出した佳句を、地域教育や国語教育の場へわかりやすい形で提供していきたい。とともに、教育、地域活動の面でも新素材として活かす取り組みを検証してゆきたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症の影響もあり、調査機関の都合により、出張が取りやめとなる場合が生じ、出張費が予定よりも、小額となったことがあげられる。また、その他の費目で予定していた、影印資料の複写取り寄せが、先方の都合で、次年度になってしまったこともあげられる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 松江序『ひとつ合器』・春坡編『小艸』にみる芭蕉顕彰と関連資料2023

    • 著者名/発表者名
      寺島徹
    • 雑誌名

      連歌俳諧研究

      巻: 144 ページ: 82-88

    • 査読あり
  • [雑誌論文] [翻刻]桂葉撰『秋田千句』(上)2023

    • 著者名/発表者名
      寺島徹
    • 雑誌名

      近世文学研究新編

      巻: 7 ページ: 88-105

  • [雑誌論文] 「桂葉撰『秋田千句」について-季吟ならびに『阿蘭陀丸二番船』との関係を中心に」2022

    • 著者名/発表者名
      寺島徹
    • 雑誌名

      連歌俳諧研究

      巻: 143 ページ: 25-34

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 伝統的言語文化の教材におけるICT教育の導入と指導法の理論化について-文学史的展開をふまえた唐代伝奇小説『離魂記』を用いた言語活動の分析をもとに2022

    • 著者名/発表者名
      寺島徹・樋口敦士
    • 雑誌名

      金城学院大学論集、人文科学編

      巻: 19(1) ページ: 215-227

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 俳諧資料の保存と活用2022

    • 著者名/発表者名
      寺島徹
    • 学会等名
      俳文学会全国大会シンポジウム
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi