研究課題/領域番号 |
21K00300
|
研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
中川 真弓 帝塚山大学, 文学部, 准教授 (20420416)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 願文 / 三十六歌仙画帖 |
研究実績の概要 |
本年度は、石清水八幡宮に所蔵される田中宗清を願主とする願文群について、引き続き調査をおこなった。それらの願文群は、宗清の将来に対する祈願を述べた願文と、長男章清の供養のための願文に分けられる。前者は、石清水祠官家内部における熾烈な別当職争いを反映して作られている。後者は、嫡男であった章清が16歳で亡くなり、宗清が深い悲歎の中でおこなった供養に関わるものである。 『本朝文集』巻33所収の菅原為長による「為猶子某祈冥福諷誦文」も、亡くなった章清のための諷誦文であり、章清を猶子としていた女性が願主をつとめている。文章の中には、彼女が猶子の死を契機に出家したことが述べられている。願主が女性であることから、文中には女性特有の表現が見え、そのなかでも當麻曼荼羅を新たに作成したことへの言及は注目される。 また、藤原孝範が執筆した「石清水権別当宗清願文」を対象として、宗清が置かれていた歴史的背景や、宗清の家族に対する意識について考察した。以上の願文については、次年度に口頭発表および論文で取り上げる予定である。 さらに本年度は、石清水八幡宮社僧であり、寛永の三筆の一人としても知られる松花堂昭乗が書いた「三十六歌仙帖」について考察し、同じ三十六歌仙を扱った帝塚山大学蔵「三十六歌仙画帖」を調査した。この帝塚山大学蔵「三十六歌仙画帖」は、浜町狩野家の祖である狩野岑信が絵を担当しており、和歌は近世初期の公家たちによる寄合書である。その考察については、「帝塚山大学蔵「三十六歌仙画帖」の周辺」(『帝塚山大学文学部紀要』45、2024年3月)として成稿化した。 その他、自治体や所属大学がそれぞれ開催する市民向け公開講座に講師として登壇するなどして、石清水八幡宮関連の願文類について、アカデミアのみならず一般向けにも情報発信をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
石清水八幡宮に所蔵される田中宗清を願主とする願文群について、研究課題の中心として調査と検討を進めてきた。予定されている口頭発表および論文等による成果公開は来年度以降となることから、本年度までの進捗状況としてはやや遅れていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き研究課題について調査・検討をおこなう。執筆予定の論文や研究会での発表が予定されているので、それらを通して研究成果を形にしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、昨年度の調査結果を引き続きおこなったため、新たな調査など遠方への旅費について想定よりも必要が生じなかった。また図書や資料も購入は必要最小限となった。ただし、来年度は学会参加や調査をはじめ、本年度よりも高額資料の購入等を予定している。
|