研究課題/領域番号 |
21K00305
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
滝川 幸司 大阪大学, 文学研究科, 教授 (80309525)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 阿衡 / 詔勅 / 勅答 / 申文 / 文体 |
研究実績の概要 |
今年度は、5月に第65回国際東方学者会議に於いて、「詔勅の文章について─阿衡の詔勅・勅答をめぐって─」という題目で、シンポジウムのパネリストを務め、その内容は、「阿衡の勅答について」という論文として10月に刊行した。また、1月には、「申文の文体ひとつ─「望請」するのは何か─」という論文を公刊した。この二本の論文は、紀伝道出身者が作成する文章を軸とした考察であり、その文体の特徴について明確な理解を得ることができた。紀伝道出身者が作成した文章を注釈的に読解し、特に文章の構成・文体・機能を検証することで、これまで見過ごされてきた特徴を確認した。 「阿衡の勅答について」では、阿衡事件をもたらした阿衡の勅答を、勅答という文章の規範から考察することで、近年、史家から提出されている、阿衡の職掌の内実が明らかでないことが事件が起こった要因であるという説について、明確に否定することが可能となった。それは、勅答には、そもそも職掌が記されないからである。 「申文の文体ひとつ」は、申文の末尾に記される文章の規範を分析することで、申文という文章を正確に理解する方法を確認した。申文は、歴史学に於いても文学に於いてもよく用いられるが、その文体を明らかにすることで、史学・文学双方から刊行されていた注釈書の不備も改めることができた。 これらは、「紀伝道出身者の学問を明らかにする」という目的に即した成果である。 但し、「紀伝道出身者の官僚社会での位置づけ」については、今年度顕著な成果をだすことができなかった。次年度への課題となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紀伝道の学問を明確に表す、詔勅や申文について注釈的な読解を蓄積できた。 基本的に注釈作業は順調に進んでおり、次年度以降もその成果を公刊することができる。 紀伝道出身者の官僚としての位置づけについては、資料収集を含め作業の進捗に遅れが見えている部分があるものの、当初の予想の範囲内である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も今年度から引き続き、紀伝道出身者の学問について研究を進める。特にこれまで先行研究の蓄積のある詩序について、新たな視点の獲得を目指す。 また、昨年度、公表できなかった、紀伝道出身者の官僚世界での位置づけに関わる儒家の伝記研究を進める予定である。特に橘広相については阿衡事件についての成果を得たこともあり、公表を目指す。
|