本研究は、題目の通り「対馬に於ける文禄・慶長の役関連言説」について考究していくことが第一の目的である。 2023年度(最終年度)は、所属先の研究費のものも含めて対馬市(長崎県対馬歴史研究センター)に3回・長崎市(長崎歴史文化博物館)に11回、文献調査に行き、対馬藩士の系譜類、対馬の史書・地誌・文書類の調査を行った。対馬市では、文禄慶長の役関連史蹟として有名な清水山城跡等、島内各地の対外戦争関連言説の伝承地の踏査も行った。 研究成果としては、2023年度(最終年度)は残念ながら体調不良もあり学会・研究会での研究発表は行えなかったが、「対馬中部の対外戦争関連神社の縁起説と現況に関して(前編)」及び「対馬藩士大石氏の家譜二種」を執筆し、いずれも『中京大学文学部紀要』58巻2号(2024年3月)に掲載した。前者は対馬島内で忘れられゆく対外戦争に纏わる伝承や伝承地を記録し残していく上で、重要であると考えている。後者は文禄の役での合戦や虎狩で活躍した対馬藩士大石智久を主将とする大石党が、文禄の役をどのように捉えて自らの家譜の中に記したのか、そして継承してきたのか、2022年度(前年度)『中京大学文学部紀要』57巻2号(2023年3月)にて紹介の「大石氏家譜」断簡と併せてより立体的に説明し得たのではないかと思う。特に智久の弟智正の系譜等、大石党傍系の文禄の役関連の叙述について触れることが出来たのが大きいと思う。 なお文献調査で得ることが出来た情報は厖大である。未整理・未消化のものもあるので、まずは『中京大学文学部紀要』次号掲載の「対馬中部の対外戦争関連神社の縁起説と現況に関して(後編)」を始めとして、引き続き研究を行っていく。
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