研究課題/領域番号 |
21K00325
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
二宮 美那子 滋賀大学, 教育学系, 教授 (40738895)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 唐詩 / 園林 / 山水詩 |
研究実績の概要 |
園林文化の展開について、先秦から明清にかけての通史的な概説を執筆した。日中の研究成果を参照し、特に士大夫文化に重点を置き、「小中見大」「壺中天」などの思想や、絵画や詩文との関わりに触れつつ、中国古典園林を「自然鑑賞・余暇の充実の場としてのみならず、時には所有者の生き方に深く関わる場所」と概括した。概説は辞書の一項目として刊行予定である。また、現在この記述もベースにして、著書の一部となる唐代を中心とした園林文学の通史的記述を執筆中である。「園林」という語の使用例や、園林を指す呼称の多様性を見ると、園林が中国古典において果たしてきた役割や性質の一端が理解できる。また、漢の田猟(狩猟)の賦・六朝の「居」を描く賦や魏晋の公宴詩・六朝の山水詩や田園詩といったさまざまなジャンルにおいて、園林は実は重要な役割を果たしてきた。初唐にいたると、貴族の別荘や士大夫層の別墅を描く詩が見られ、その後王維のモウ川荘や杜甫の浣花草堂、白居易の廬山草堂といった、現在でも固有名で認識されるような園林が、詩作の舞台として現れるようになる。通史的展開の確認は、園林文学の各論の前提となる重要なものである。 また行旅詩の展開について、六朝(『文選』を中心に)から盛唐・孟浩然までの展開をまとめた論考を発表した(2023年4月刊行)。園林文学と「行旅」の詩とは、山水と深い関わりを持ちながら発展したものという共通点があり、本論考は園林文学を考察する際にも意義をもつものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、園林文学の通史的記述は執筆の途中段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
中等の詩人韓愈の園林詩の整理と再検討を進める。城南別墅をめぐる作品(「遊城南十六首」「城南聯句」)あるいは「盆池五首」「奉和劉給事使君三堂新題二十一詠」「奉和銭七曹長盆池所植」などの小品群に表れる特色を考察する。庭園の「池」をめぐる詩文、あるいは造園を巡る意識について、白居易の同テーマの作品群との比較を試みる。韓愈と白居易を取り巻く文人群は、一部で重なりを見せながらもその趣味指向に様々な違いを見せる。彼らが園林で行った交遊のあり方や作品を取り上げて、それぞれの個性を明らかにしたい。得られた成果は国内の学会で発表し、随時論考にまとめることを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
主要な学会がオンライン・対面併用の開催となり、また海外渡航も制限されることなどから、旅費を使用しなかったことによる。物品費(書籍・ソフトウェア)等、社会状況に大きく影響されない費目で適切に予算を使用していきたい。
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