研究課題/領域番号 |
21K00332
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
佐竹 保子 大東文化大学, 外国語学部, 特任教授 (20170714)
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研究分担者 |
齋藤 智寛 東北大学, 文学研究科, 教授 (10400201)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中国文学 / 中国思想 / 仏教哲学 / 文学観 / 詩の注釈 / 六朝時代 |
研究実績の概要 |
研究代表者の佐竹保子は、本研究に関わるものとしては、2本の雑誌論文、1冊の訳書を刊行し、さらに1件の学会発表、1件の講演を行った。研究分担者の齋藤智寛は、1本の雑誌論文、2件の学会発表を行った。 雑誌論文の佐竹「謝チョウ(月篇に兆)「游東田」詩の新しさ――特に後三聯の修辞に注目して」(『集刊東洋学』第125号)は、5世紀「游東田」詩に対する7世紀李善の解釈と8世紀五臣の解釈の違い、及び五臣が引用する典故の不適切さを確認した後、それぞれの解釈では全体がどう読めるのかを検証し、もっとも早い李善の解釈によって「游東田」の新しさが見いだせることを示した。また佐竹「「言志」「縁情」から「形似」へ――中国5世紀における詩歌観の変質とその波及」(『中国言語文化学研究』第11号)は、紀元前以来の中国における詩歌観を辿り、5世紀そこに変化が生じたことを示し、それを日本における中国古典詩の鑑賞形態を踏まえた上で、日本古典詩歌の実態や詩歌論と比較し、その変化が日本に波及し日本の和歌・俳句・短歌に至るまで影響し続けている可能性を示した。訳書『陶淵明影像――文学史と絵画史の交叉研究』は、中華書局が2009年に発刊した袁行霈『陶淵明影像』の全訳に、陶淵明「桃花源記」「帰去来兮の辞」の原文・訓読を添えたもので、原著は、中国4世紀後半から5世紀前半を生きた陶淵明に関わる絵画や和陶詩を、唐代から清代、さらには朝鮮半島や日本列島に至るまでを追い、中国文化の重要因子としての陶淵明像を浮き彫りにしている。講演「「言志」「縁情」から「形似」へ」は、そのおもな内容を上記2本目の雑誌論文にまとめてある。 雑誌論文の齋藤「釈僧崖の生涯――菩薩行としての捨身行――」は、焼身を遂げた釈僧崖(生年不明、562年没)の伝記を検討し、殺生忌避や病人救済などの思想が僧伝を通していかに描かれたかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の佐竹保子と研究分担者の齋藤智寛は、それぞれ本研究に関わる雑誌論文や訳書を発刊し、学会発表や講演も複数回行っている。 佐竹の学会発表「五世紀における詩歌観の変質――その淵源とその波及」(六朝学術学会第43回例会。早稲田大学戸山キャンパスにて。Zoomと対面によるハイブリッド方式による)は、中国と日本における詩歌観の変化が5世紀中国の詩歌観に由来していることを指摘し、それが5世紀中国の仏教哲学に淵源していることを述べた。 齋藤の学会発表「道宣の感通と「東夏」意識の変遷」(中唐文学会。Zoomによるオンライン方式)、「“眉鬚堕落”和“不惜眉毛”:从疾病形象看中古仏教思想的演変」(東亜感文献与文化交流国際学術研討会。四川大学主催のZoomによるオンライン方式)は、5世紀前後に活動した僧侶の伝記を書いた道宣の著述からその「東夏」意識の変遷を探り、また、疾病の表現から仏教思想の変化をたどった。 いずれも来年度の研究に生かされるはずである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、研究代表者の佐竹保子は、おもに詩文作品を対象に、研究分担者の齋藤智寛は、おもに仏典や禅語録を対象に、文学観や詩文の実作と仏教哲学・仏教思想との、顕在的および潜在的関わりについて考究していく。もとより、従来通り、佐竹は仏典や禅語録も研究範囲に含めているし、齋藤も詩文作品をよく検討している。双方の疑問点や解読が困難な箇所を相互に教示しあい、また双方の新たな知見を速やかに交換し合って、認識の共有をはかる。 研究計画は変更しない。研究を遂行する上での解決困難な課題も、今のところは見つかっていない。
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次年度使用額が生じた理由 |
[理由]予定していた研究打ち合わせと図書館での書籍調査のための出張を、コロナウィルス流行が収束しないため、罹患して本務校に迷惑をかけるのを恐れて、中止せざるをえなかった。 [使用計画]新年度に出張を再開する。また、必要書籍を購入する。
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