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2023 年度 実施状況報告書

『参天台五臺山記』を援用した漢文手紙文書の運用実態解明に向けた研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K00335
研究機関広島大学

研究代表者

山本 孝子  広島大学, 外国語教育研究センター, 准教授 (10746879)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード書儀 / 手紙 / 『新集雑別紙』 / 『記室備要』 / 月儀
研究実績の概要

表状箋啓書儀は、体系的にまとめられた吉凶書儀と比べると、雜多な文例の寄せ集めといった印象を与え、各書儀の内容や構成、文例の排列順序に共通性・規則性を見出すことは難しい。しかしながら、一部には、一年十二ヶ月の挨拶の手紙の文例を月ごとに並べた形式が採るものが含まれている。本年度は、表状箋啓書儀のうち、特に月儀に類する形式に焦点を当て、その成書や伝播の過程について研究を進めた。全体として、書儀の史的変遷を跡づける作業が一歩進んだと言える。
『記室備要』については、P.3723、P.3451Bis、S.5888の三写本が現存するが、月儀部分が残るのはP.3723のみである。比較対照な部分について、標題や呼称、「厶」字の使用状況などを見ると、P.3723は意図的に改編が加えられたテキストであり、模範性・虚構性が高められていることがわかった。月儀部分についても、各月二通一組の往復書簡ではなく、ひと月当たり三通の文例を収録する点や節日の送物・賀状等が紛れ込んでいる点など、一般的な月儀とは異なる特徴を持つことを明らかにした。
『新集雑別紙』については、写本には「月旦賀官玖拾貳首」とあるものの、実際に記されている文例の数は16首のみである。この16の文例の特徴を分析し、それに基づき本来92首の構成の復元を試みた。92が12の倍数ではないこと、「賀冬(冬至の賀状)」が残っていることなどから、「月旦賀官」とあるものの、実際には毎月ついたちの文例のほかに、節日の賀状があわせて収録されていたであろうこと、各月相手の身分に合わせた複数の文例が示されていたことが見えてきた。また、これらの特徴は同時代のほかの書儀との共通するところがある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

伝統的な月儀と表状箋啓書儀に見られる月ごとの文例の関係について分析し、表状箋啓書儀の編纂の過程が少しずつ明らかになってきた。書儀の分類方法(朋友書儀・吉凶書儀・表状箋啓書儀の三分類)の見直しに関して、書儀の編纂過程から検証する作業はおおむね順調に進展しているといえるだろう。

今後の研究の推進方策

書儀の編纂と手紙の作成について、引き続き分析を進めていく。表状箋啓書儀が記される写本の形態もまた書儀としての性質を考える上で重要な手掛かりである。フランス国立図書館などで、『記室備要』や『新集雑別紙』の冊子本に書写される書儀と、数点の手紙の実見調査を行いたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

原稿の校閲費(中国語ネイティブチェック)に充てる予定であったが、今年度は口頭発表のみで文章化するに至らなかった。次年度中に未完成の中国語論文を完成させ、校閲費に充てる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 『記室備要』に見られる月儀――書儀の性質と製作の過程に着目して2024

    • 著者名/発表者名
      山本孝子
    • 雑誌名

      敦煌寫本研究年報

      巻: 18 ページ: 85-104

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 書儀與書札之間――編纂歩驟、性質及内容的再認識2023

    • 著者名/発表者名
      山本孝子
    • 雑誌名

      敦煌學

      巻: 39 ページ: 1-21

    • 査読あり
  • [学会発表] 《新集雜別紙》的形成與轉播――以P.4092及S.5623兩種冊子本的物質特性為導向2024

    • 著者名/発表者名
      山本孝子
    • 学会等名
      第15屆通俗文學與雅正文學ーー「越境與跨界」國際學術研討會
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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