研究課題/領域番号 |
21K00339
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
市川 千恵子 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (10372822)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マーガレット・ハークネス / エセル・カーニー・ホールズワース / 労働争議 / オーストラリア / 社会主義 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、転任とコロナ禍のため、海外調査や国際学会の参加ならびに研究発表を行えず、予定した研究活動を展開することが困難な状況であった。令和3年度の研究概要は、本研究課題の中心的作家のマーガレット・ハークネスとエセル・カーニー・ホールズワースの二人のジャーナリストとしての活動が主となった。まず、ハークネスをめぐっては、小説の女性労働者表象の再検証と、オーストラリアでのジャーナリストとしての活動、とりわけ労働争議の記事に注目した。ハークネスはオーストラリアの新聞社に活動の場を求め、労働争議を中心に取材活動を展開しただけではなく、短編小説を新聞に連載していた。後者の作品はまだ手にはいっていないが、イギリスに帰国後にオーストラリアでの取材活動は小説のプロットに活かされている。なお、得られた研究成果はThe Research Society for Victorian Periodicalsの年次大会(2022年9月、オンライン)での発表に採択されている。次に、エセル・カーニー・ホールズワースの雑誌論説における工場労働、社会主義と女性、さらに映画評を調査した。同時に、1880年代から1920年代までの社会主義の興隆と労働者階級の女性たちの政治的覚醒について、基礎的調査を続けている段階であるが、カーニー・ホールズワースの詩と小説における抵抗の言葉とを関連づけ、令和4年度以降も引き続き労働者階級の想像力と抵抗の文化をめぐる問題を検証していきたい。なお、このカーニー・ホールズワースをめぐる調査の成果もIndustrial Labour & Cultural Engagement in the Long Nineteenth Century Conference (2022年8月、イギリス・マンチェスター大学開催予定)での発表に採択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の中心的作家であるマーガレット・ハークネスとエセル・カーニー・ホールズワースの二人のジャーナリストとしての書き物を部分的ではあるが、調べることができ、その成果を二つの国際学会において研究発表することが決まっている。ハークネスのオーストラリアでの執筆活動は、中心性と周縁性の概念を再定義しうる要素が見出せる。さらに、カーニー・ホールズワースの論説と詩を中心に、労働者階級の抵抗の文化とアイデンティティ形成に関与する労働者階級女性作家としての声の獲得について考察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の前半は、まず8月と9月に開催される国際学会のための発表原稿の準備と執筆に取り組む。次に8月の学会において発表するカーニー・ホールズワースの発表原稿をもとに、論文をまとめて、学術雑誌に寄稿する予定である。令和4年度の後半は、女性と社会主義の問題をめぐる二次文献をさらに調査し、そのうえで一次文献としてのハークネスとカーニー・ホールズワースの文学作品と新聞・雑誌論説の読解を進めたい。特に、女性の貧困をめぐる問題の政治的表象の分析に集中することにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時には海外出張を予定していたが、コロナ禍の影響により、イギリスの図書館とアーカイブでの資料調査や国際学会の研究発表のための海外出張用の旅費が発生しなかった。
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