研究課題/領域番号 |
21K00351
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
松本 靖彦 東京理科大学, 教養教育研究院野田キャンパス教養部, 教授 (10343568)
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研究分担者 |
福島 祥一郎 同志社女子大学, 表象文化学部, 助教 (10600455)
橋野 朋子 (石井朋子) 関西外国語大学, 英語国際学部, 講師 (40388476)
渡部 智也 福岡大学, 人文学部, 准教授 (80612845)
岡本 晃幸 藤女子大学, 文学部, 准教授 (80755687)
西山 けい子 関西学院大学, 文学部, 教授 (90298737)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | チャールズ・ディケンズ / エドガー・アラン・ポー / 推理 / 風刺 / 革命 / 都市 / 心霊主義 / ユーモア |
研究実績の概要 |
本年度は、各研究組織構成員がそれぞれの分野での調査・研究活動を遂行するのに加えて、研究組織構成員全員参加による以下の4回の研究会(すべてzoomによる遠隔会議形式)ならびにメーリングリストを介したやり取りを通して、活発に研究上の意見・情報交換を行った。本年度の研究実績としては、まず上半期に、研究代表者・各研究分担者の役割分担(どの主題、視点を担当するか)を確認した上で、研究組織構成員のそれぞれが研究計画に沿ったテーマに即した論考(日本語 15,000 字程度、本文・注・引用文献含む)を準備した。下半期は、集まった6本の論文を土台にして議論を重ねつつ、それぞれの主題、担当分野について、またポーとディケンズの文学およびその時代・社会背景について新たに得られた発見を指摘、共有した。その結果、各構成員がそれぞれの担当分野における論考の修正・加筆方針、どの方面について(どのような文献に基いて)調査が補強されるべきか、などについて具体的な指針や示唆を得ることができた。また、今年度の研究活動から得られたその他の成果として、研究分担者が行った国内学会発表1件、国際学会発表1件を挙げることができる(いずれもzoomによる)。 第1回研究会(2021年9月16日 10-12時):研究内容をまとめた共著刊行計画を含めた研究計画の概要・基本方針に関する打ち合わせ。 第2回研究会(2021年12月11日13-15 時):渡部智也論文・福島祥一郎論文の合評会および意見・情報交換 第3回研究会(2022年2月17日14-16 時):松本靖彦論文・岡本晃幸論文の合評会および意見・情報交換 第4回研究会(2022年3月15日14-16 時):橋野朋子論文・西山けい子論文の合評会および意見・情報交換
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、3年間の研究機関を年度ごとに3段階に分け、初年度にあたる2021年度については、当初研究計画調書に記した通り、次のような目標を設定していた。 第1段階(2021年度):研究代表者ならびに研究分担者とで 6つの論点(1.幽霊譚と怪奇趣味 2.無気味さとユーモア 3.風刺と文芸批評 4.都市と雑誌文学 5.探偵と書評6.革命(暴動)と群衆表象)の1つずつを担当し、それぞれの主題についてディケンズとポーの作品(書簡・書評を含む)にみられる(思考)態度、反応、表現方法のどこまでが共通しており、また、どこからがどのように異なるのか、分析・考察を進める。 当該年度を通じて各研究組織構成員が遂行した調査・研究活動、および全4回にわたる研究会(すべてzoomによる遠隔会議方式による)とMLを通じた協議・情報交換の結果、以下の理由から上記の研究計画は概ね達成されたと判断している。 1.研究組織構成員6名全員が各担当分野(論点)に関する論文を作成することができた。2.1.の論考を基にディケンズとポー(の作品、先行研究、批評等)を比較し、共通点や相違点について、質・量ともに当初の想定を超える有益な知見を得ることができた。3.2.の作業と同時並行してディケンズ、ポーそれぞれの基本的な研究資料(史料)、重要な先行研究等について情報交換・共有することができた。その結果、本研究全体の議論の土台となる分析・考察のポイントをより明確化し、新たな展開を導き出すための準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は、以下のような段階を踏んで研究を推進する計画である。 第1段階の研究において研究代表者、研究分担者のそれぞれが個別に得た知見や発見を共有し、互いの担当分野を比較検証することで共通(類似)した傾向を探る。例えば、上述した研究論点の4.で扱う不特定多数の都市の群衆は5.で探偵の推理と分析の俎上となる存在でもある。また、4.と6.は一見別なカテゴリーでありながら、4.で扱う雑誌読者や都市の群衆(crowd)は、6.で扱う革命時には暴徒と化す潜在性を秘めた群衆(mob)でもある。これ以外にも2021年度の研究会やMLでの協議を通じて、1.と2.の論点、また3.と6.の論点同士を関連付ける概念(視点)が見出された。第2段階の2022年度の研究活動においては、1.~6.それぞれの分野を結ぶ鍵概念がさらに浮かび上がってくると予想する。このように6つの項目に基きながらも、複数のカテゴリーにまたがる観点からディケンズとポーを比較するのが第2年度の目標である。2022年度の研究において前年度の成果をもとにして発展させる点がもう1点ある。それは2021年度の議論の課程で提起された新たな研究上の論点(項目)の考察である。 研究の第3段階(2023年度=最終年度)においては、ポーとディケンズ両者に影響を与えた政治・社会的背景にも目配りしつつ、それまでの研究成果を総括し、その内容を共著として発表する準備をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた状況の背景には次のような理由がある。ひとつには国内外の学会・研究会が遠隔会議方式で実施されたため、旅費が発生しなかったこと。予算作成段階においても、当該年度、国内外への研究上の出張(学会・研究会参加目的を含む)の困難が予想されたため、大部分の研究組織構成員は、物品費中心の支出を計画していたが、もし可能であるならば当該年度の下半期に国内外の学会・研究会への参加を望んでいた者もおり、そのために旅費として使用可能な額の支出を控えていたところ、結果的に研究組織構成員が関わる全学会・研究会が2021年度は zoom 開催となったため、未使用額が生じた。また、下半期になって入手する必要が生じた資料が当該年度の物品費残額では購入できないため、次年度の助成金と合わせて入手することにした者もおり、そのため計画的に2022年度に持ち越した未使用額がある。 次年度においては、当該助成金(2021年度分未使用額)と翌年度分の助成金とを合わせることにより、(状況が許すのであれば)特に国外への旅費として活用し、国際学会への参加や海外の研究機関への調査を実現したいと考える。また、当該年度と次年度の予算を合わせて使用することにより、希少価値の高い(それゆえに高額の)資料も確保したいと考えている。
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