研究課題/領域番号 |
21K00357
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
藤野 功一 西南学院大学, 外国語学部, 教授 (40321294)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 不定形の行動主体 / 対話 / 文学読解 / 都市 / 連帯 / アメリカン ・モダニズム / 大衆文化 / 不定形な働き |
研究実績の概要 |
2022年度の実績としては主に四つ挙げられる。[1]学生の「不定形の行動主体」に焦点を当てつつ、多様な観点から英文を書く指導法を述べた発表として2022年5月22日日本英文学会第94回大会にて研究発表「オンライン授業における対話と文学読解―The Things They Carried をCerteauの言葉とともに読む」を行った。[2]前述の研究発表のProceedingsを同題名で2022年7月3日に『日本英文学会第94回大会(2022年度)Proceedings』に掲載した。[3]2022年 10月17日には小鳥遊書房より、中村嘉雄・小笠原亜衣・塚田幸光の編著による共著『モダンの身体―マシーン・アート・メディア』が出版され、この共著の担当章としては、身体とロケットの関わりの中から生まれた「不定形の行動主体」がいかにして有人ロケット飛行による宇宙探索という概念に結晶化していったかの過程を述べた「ロケットと身体―アメリカン ・モダニズムと大衆の想像力」の部分を執筆した。[4]2023年 3月31日には、開文社より藤野功一編著として『都市と連帯―文学的ニューヨークの探究』を刊行し、この共著では「序―他者の歴史化に向けて」、「都市の渇き、あるいはラルフ・エリスンの『見えない人間』における不定形な働きについて」、および「あとがき」の部分を執筆し、また、編者として論集全体の編集、索引の編纂、表紙デザイン原案、全体の装丁についての原案を担当した。この論集では、特に論文「都市の渇き、あるいはラルフ・エリスンの『見えない人間』における不定形な働きについて」において、従来のアイデンティティの概念では捉え難い「不定形の行動主体」の概念を、エリスンの作品分析とともに考察し、フォークナーの後期作品における「不定形の行動主体」の研究のための礎石とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は研究発表1回、研究発表に基づいたプロシーディング1編、共著中の論文一編、さらに編著書を一冊刊行し、これらの実績によって、「不定形の行動主体」についての概念をより明確化するという目的については、当初期待した以上の実績を上げることができた。しかし、本来の研究対象であるウィリアム・フォークナーの後期作品について、「不定形の行動主体」の概念を適用した具体的な研究は、未だ遅々として進んでいない。今回の研究計画の成果を出版するにあたり、出版契約を結んだアメリカの出版社であるLexington Booksには、進捗状況を報告するための英文草稿を8月28日に送付したが、この草稿はあくまで進捗状況を示すためのもので、具体的な研究成果として単著として刊行するには、まだ時間が必要ではないかと思われる。特に、コロナ禍の影響により、本来であれば2021年3月31日から2022年3月31日まで行う予定であった在外研究が延期され、2024年3月31日から2025年3月31日に実施することとなった。この変更のために在外研究中に予定していた作品研究及びLexington Booksからの単行本刊行に向けての準備は、まだまだ進展していないと言わざるを得ない。そのため、本研究課題の客観的な進捗状況は「やや遅れている」としたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法としては、2022年度に刊行した藤野功一編著による『都市と連帯―文学的ニューヨークの探究』の序文「序―他者の歴史化に向けて」において提示できた「他者の歴史化」の概念、および、論文「都市の渇き、あるいはラルフ・エリスンの『見えない人間』における不定形な働きについて」によってより明確に記述した「不定形の行動主体」の概念を踏まえて、具体的なウィリアム・フォークナーの後期作品研究を完成させるべく、英文による単著Amorphous Agency in William Faulkner’s Later Novelsの執筆に取り組みたい。この単著の完成は、アメリカでの1年間の在外研究も必要であるため、コロナ禍のために延期となった在外研究を2024年3月31日から2025年3月31日に実施したのちに完成する予定である。また、現在、京都女子大学の金澤哲先生の主導のもとに進められている、ウィリアム・フォークナーのスノープス三部作を中心とした研究活動及び論集作成にも参加しているため、この活動における研究発表、および論文作成にも取り組む。
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