研究課題/領域番号 |
21K00358
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
坂井 隆 福岡大学, 人文学部, 准教授 (90438317)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 能楽 / 具体美術協会 / イエロー・フェイス・パフォーマンス / 別役実 / 冷戦期文化外交 / ジャクソン・ポロック |
研究実績の概要 |
当初の計画では、最終年度に相当する2023年度は、総括的研究(Williamsと日本演劇との関係を日本と英米演劇の交流史の中に再文脈化するための調査)を行う予定であった。しかし、これまでの調査の過程で新たに取り組むべき複数の課題が明らかになったため、予定を変更し、総括の作業ではなく、それらの研究課題、具体的には、①「Williamsの「能」の理解」、②「日本の前衛芸術集団「具体美術協会」(通称、具体)の影響」、③「1950年代ハリウッド映画における白人男性俳優による「日本人」擬態」、④「日本の不条理演劇の騎手別役実によるWilliams受容」に取り組んだ。①から③に関しては研究が進展し、その成果を、2024年3月10日に開催された国際ワークショップ(Workshop in Kitakyushu: U.S. Fiction and the Cold War)の場で口頭発表した。発表題目は"Hystericizing Noh Drama: Tennessee Williams's "Queer" Encounters with Cold War Japan"である。Williamsが「能」の影響を受けて書いた戯曲The Day on Which a Man Dies (1960)を扱い、冷戦期アメリカによる文化外交(対東南アジア)を背景にして彼がその一幕劇を通して構築した三島由紀夫、「具体」(特に村上三郎)、そしてJackson Pollockとのネットワークを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果としては国際ワークショップでの口頭発表1件のみであったが、その研究発表において新たな研究課題の多くを検証でき、他のパネリストや参加者たちから論文化に向けての貴重なフィードバックも得ることができた。よって「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、国際ワークショップでの口頭発表用原稿を論文化することに力を注ぎたい。アメリカの査読付きジャーナルに投稿することを予定しているので、執筆とそれに伴う追加の調査に多くの時間を割くことになると思われる。その過程で国外の図書館(モルガン・ライブラリー)でのアーカイブ調査が必要になるかもしれないので、ニューヨーク出張も考えている。ただし、校務の関係で出張が難しい場合は、オンライン資料や、資料の複写の取り寄せ制度などを利用して調査を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた最大の理由は、当初予定していた海外での調査(ニューヨーク市内での劇場調査と、New York Public LibraryやPierport Morgan Libraryでのアーカイブ調査)が、校務との関係で、実施できなかったことである。また、国内の学会も比較的近場で開催されたために、交通費や宿泊費が比較的低く済んだことも理由のひとつである。勤務先での校務スケジュールを調整して、2024年度には海外調査を実施し、これまでの遅れを取り戻したいと考えている。その調査に翌年度分として請求した助成金と組み合わせて使用したい。ただし、海外調査が実施できない最悪のケースも想定し、その場合は、2024年度の調査で必要になる高価な古書や一次資料の購入、ならびに資料の複写の取り寄せ費用に充てる予定である。
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