研究課題/領域番号 |
21K00363
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
石川 隆士 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (60315455)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | イェイツ / 英文学 / ケルト / 竪琴 / 螺旋 |
研究実績の概要 |
コロナ禍で海外における一次資料調査が実施できなかったため、資料の収集と分析に作業を集中させ、その成果として、日本イェイツ協会第57回大会にて「風の詩学:斬首における不在と表象のアポリア」と題する研究発表を行った。 この研究成果発表は本研究の、調和の概念の変遷としての「イオリアの竪琴」から螺旋への風の修辞の移行、螺旋とケルト文様の相同性・連続性という二つの課題のうち、前者にあたるもので、「美しき首斬女」あるいは「去勢する女」の主題が19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパ芸術において近代知のファロサントリックな本質を含んでいたからであり、一元的な支配から、多元的価値観への移行を示す重要なモチーフである。W.B.YeatsがThe King of the Great Clock Tower,およびA Full Moon in Marchの中でそのモチーフを明示的に取り扱ったことは、螺旋の修辞としてNineteen hundred and Nineteenで「去勢する女」を暗示的に表現したことの関係性において重要な意味を持つ。イェイツにおける螺旋の修辞においては全てのものが変化のプロセスにあり、そこでは常に差異が生産される。それは完全に対する不完全な状態ではなく、逆に完全なるものは不在である。そして、現状肯定とか、終局点といった静的な状態は存在せず、もちろん失敗というものが多いに含まれながら、常により適切な状態へと改善が継続される。こうした持続的な「相違」の産出が螺旋の修辞が表す生成的調和の特質であり、この相違によって生じる多様な構成物相互の有機的関係が調和なのである。その意味で「去勢する女」の主題が螺旋との関係で取り扱われる時、そこには一元的な世界観から多元的な世界観への移行が示されていると言える。そのテーマを学術論文として執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍によって一次資料収集歌のための海外渡航は見送ることとなったが、それは計画に織り込み済みであり、入手可能な資料収集に努め、資料整備のためのインフラの充実を図った。 研究成果の段階的公表としての研究発表は予定通り実施でき、研究論文の執筆にとりかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度については、研究発表はすでに1件「The Wild Spirals: Robinson Jeffersにおける生成的調和」と題するものが予定されており、学術論文も執筆中である。 今後も国内外の研究発表あるいは論文投稿を毎年実施する。 一次資料収集のための海外渡航は、コロナ禍の感染状況をみながら、アメリカ、ドイツ、フランス、スコットランド、アイルランドと予定されている調査先を柔軟に組み合わせて対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により一次資料の現地調査が実施できなかったため、書籍、資料整理のためのインフラ整備に集中させ、現地調査は次年度以降にシフトさせたため。
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