研究課題/領域番号 |
21K00365
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
小松 恭代 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (70710812)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヨシコ・ウチダ / 日系アメリカ人 / 日系アメリカ人と日本の表象 |
研究実績の概要 |
2021年度の計画では、ヨシコ・ウチダの資料を所有するカリフォルニア州立大学バークレー校のバンクロフト図書館に調査に行く予定であったが、コロナ禍のために行くことができず、ネット上に公開されている資料の中から日本滞在時のウチダの体験に関する資料の収集と分析を試みている。 ウチダの1950年代から1960年代の日本滞在に関する資料を集め、どのような視点から日本人の生活や習慣を描いているのかを分析中である。ウチダは1952年の長期滞在中に民藝家の河井寛次郎と出会い、彼の思想や作品に大きな影響を受けたことがわかっている。京都滞在中に河井宅を度々訪れており、河井の思想や生き方をまとめたWe Do Not Work Alone(1953)を出版し、雑誌『民藝』にも投稿している。河井の住居は現在、河井寛次郎記念館となって一般開放されているが、この記念館の訪問によって河井の住居や庭のたたずまいがウチダ作品の日本の家屋や室内の描写に影響をあたえていることを確認した。特に、Takao and Grandfather's Sword(1958)は京都で窯業を営む日本人家族の物語であり、記念館の訪問によって河井との交流の影響が作品のいたるところに現れていることを確認した。 ウチダの日本滞在の資料から高度経済期の日本人の生活の変化を直に感じ取っていたことがわかるが、それはBetween Miya、 The Full Circle、 Sumi & the Goat & the Tokyo Express 等の日本を描いた作品に反映されていることを確認した。 ウチダの最初の作品、The Dancing Kettle and Other Japanese Folk Tales(1949)のアメリカでの受容に関して、出版社との手紙や新聞等の書評から分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はヨシコ・ウチダの資料を所有するカリフォルニア州立大学バークレー校のバンクロフト図書館に調査に行く予定であったが、コロナ感染症拡大により海外出張ができなかった。そのため、日本で入手可能な資料での調査しかできておらず、不十分なデータの中での分析となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はコロナ感染の状況を見ながら、可能であればUCバークレーのバンクロフト図書館で調査を行う。ウチダには出版されていない日本作品があるようなので、これらの原稿を調査し、ウチダの日本での体験と作品との関係の分析を深める。 河井寛次郎の思想がウチダ作品に与えた影響の検証・分析を行う。アメリカの美術雑誌に河井の作品と思想にかかわる記事を投稿しているようなので、それらの資料を収集する。 ウチダの日本滞在での体験と作品との関連を分析中であり、バンクロフト図書館での調査結果も合わせて論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
この研究はカリフォルニア州立大学バークレー校のバンクロフト図書館での資料調査をもとに行うことになっている。2021年度は新型コロナの感染予防のために海外出張を差し控えたため、助成金を使用することができなかった。 2021年度の助成金は2022年度の海外調査費に使用する予定である。
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