研究課題/領域番号 |
21K00366
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
石倉 和佳 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (10290644)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イギリスロマン主義 / 太平洋 / ハワイ / G.バンクーバー / イギリス海軍 |
研究実績の概要 |
本研究は、ロマン主義期の文学作品に現れた太平洋表象について考察するものである。ロマン主義文学の太平洋に関連するモチーフや表象には、太平洋諸地域の現在性の意識によって醸成された時代精神の表出が見られる。本研究の目的は、多義的な様相を呈する太平洋に関する同時代資料を確からしさにおいて批判的に評価して利用するところにあり、その上でロマン主義期独特の太平洋表象の在り様を文学作品に見出すところにある。 今年度は、ロマン主義期における太平洋表象と関連すると考えられる同時代資料の収集を行い、検討を加えた。クックの太平洋航海に関連する美術工芸品などの事物を収集したウィリアム・バロックの博物館についての書籍や展示物の詳細を分析するとともに、ハワイの「王のマント」についての考察を纏めた。これらの太平洋諸島の美術工芸品がどのような経緯でイギリスにもたらされ収集管理されたか、もしくは散逸したかなどの詳細についてはこれまで十分に整理されておらず、文献資料に基づいた整理は今後も続けていく。 また、ハワイ諸島への旅行記および海軍関係の資料について、ロマン主義期の文学者との接点を探りながらを検討した。ジョージ・バンクーバーによる太平洋航海記の受容を検討するとともに、コールリッジのパンティソクラシーに見られるような1790年代のユートピア思想についても、太平洋との関連から考察している。これらの資料調査および検討した成果は、次年度以降に発表していく予定である。 今年度は海外での調査研究が実行できず、研究発表等の活動は「カルチュラル・グリーン研究会」での国内研究会のみとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主に資料調査と整理を行った。同時代の太平洋関係の書籍および関連論文を収集するとともに、ウィリアム・バロックの博物館についての書籍資料をデータベース化し、これまで入手した資料の内容についてはほぼ整理がついた。太平洋関係の工芸美術品等については、引き続いて資料を探求する。また、ロマン派の作家や詩人たち、また同時代の文芸作品と太平洋との関連についての文献は、ある程度収集ができたため、次年度に向けての成果の取りまとめに入っている。今年度はバロックの博物館にも陳列された「王のマント」についての考察のみの発表となったが、初年度の目的はほぼ達成したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、主に次の三つのテーマからアプローチを行う。①バロックの博物館陳列物と同時代作家の関わり、②ユートピア思想とハワイ、③バンクーバーの太平洋航海と航海をテーマとした文芸作品、である。①については同時代の展示や博物館での展覧会などとの関連についても掘り下げたい。②については、1790年代の社会批判からくるユートピア思想の様々を取り上げる中で、ハワイ(サンドウィッチ諸島)への関心を掘り起こす。③については、バンクーバー航海記のイギリスにおける受容を考察することで、同時代作品との関連を探る。これらについては、研究成果を見ながら、論文に取りまとめることが出来るものから発表する予定である。また、機会が得られれば海外での発表を視野に入れる。 研究の遂行には、資料整理が必要な場合があるため、適宜アルバイトを雇用して対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は海外渡航が難しく、イギリスでの資料調査や学会参加が出来なかったため、海外渡航費が次年度へ繰り越しとなった形である。資料収集については、海外DBの利用や図書館からの取り寄せなどである程度カバーできる見込みである。海外旅費については、今後学会等への参加機会があればその時に利用する。
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