研究課題/領域番号 |
21K00367
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
渡辺 真理香 北九州市立大学, 外国語学部, 准教授 (60587616)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アジア系レズビアン文学 / アジア系セクシュアル・マイノリティ文学 / アジア系アメリカ文学 / レズビアン文学 / セクシュアリティ / インターセクショナリティ / クィア・セオリー / クィア・ポリティクス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、セクシュアル・マイノリティの社会的変容がアジア系レズビアン文学の展開にどのような影響を与えたのか、歴史的・理論的な角度から検討することで、多文化主義のアメリカ社会の全体像を掴むことである。特に、比較的新しい世代の作家たちがどのような政治的声を作品に込めているのかを分析し、アメリカの多文化主義の現代的な問題を捉えることにある。 2021年度は、主に関連図書や論文の収集を行い、前提となる知識の蓄積や先行研究の全体像の把握に励んだ。研究成果として、論稿「二一世紀のアジア系セクシュアル・マイノリティ文学――交差する人々の物語」を共著『アジア系トランスボーダー文学――アジア系アメリカ文学研究の新地平』(山本秀行・編集代表、2021年10月発刊)に寄せた。ミサ・スギウラ(Misa Sugiura)、アレグザンダー・チー(Alexander Chee)、リカ・アオキ(Ryka Aoki)の作品を考察し、アジア系セクシュアル・マイノリティが「インターセクショナル」な存在であることを強調した。また、ミチヨ・フカヤ(Michiyo Fukaya)についての研究発表「クィア・セオリー以前期におけるアジア系レズビアン文学」をアジア系アメリカ文学会第143回例会(2022年3月)で行った。社会活動家として知られているフカヤだが、作家としての側面に注目されることはこれまでほとんどなかった。フカヤの作品考察を通して彼女の周縁性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、1990年代までのセクシュアル・マイノリティの社会的変容とアジア系レズビアン文学の関係解明を目的とし、文献収集と作品分析を行った。新型コロナウィルス感染拡大防止のため、アメリカ現地で資料収集を行うことはできなかったが、国内にいても取り寄せ可能な資料は出来る限り入手した。具体的な研究成果は「研究実績の概要」の通り。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、「新自由主義」「新しいホモノーマティビティ」等をキーワードにアジア系レズビアン文学の考察を進めていきたい。その際、白人レズビアン文学、黒人レズビアン文学、アジア系ゲイ文学との比較考察も行う必要があると考えている。 研究成果は、アジア系アメリカ文学会、日本アメリカ文学会等において口頭発表を行い、その後論文にまとめて各学会誌に投稿する予定である。コロナ禍での渡航制限が緩和されれば、アメリカでの資料収集や国際学会への参加も視野に入れている。それが困難な状況であれば、オンラインでの研究成果発表の機会を模索したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画的に物品を購入した結果やむをえず生じた端数。端数にあわせて無理に不要なものを購入することはしなかった。
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