研究課題/領域番号 |
21K00368
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
原田 美知子 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (00291865)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | W. B. Yeats / アメリカ講演旅行 / バラッド |
研究実績の概要 |
夏休みや春休み等を使って、アメリカへ資料集めに行く予定だったが、コロナ感染がまだ収束していなかったため、海外渡航は見合わせた。 これまでに購入してあった書物やニューヨーク市立図書館、ボストン大学図書館でこれまで集めた資料を整理し、英語論文の構想を練ると同時に、2022年5月末日締め切りの日本イェイツ協会発行『イェイツ研究』第53号に論文を投稿すべく、現在執筆中である。内容は以下のとおり。 1932年10月、イェイツの5度目になる最後のアメリカ講演旅行は、若手文学者の育成と政府による検閲に対抗するために組織されたアイルランド文学アカデミーの資金調達が主たる目的である。アイルランド文学界への最後のご奉公という以外に、あまり注目されることはなかったが、この第5回目の旅行での出会いがきっかけとなって、一冊の書物が生まれた。『新しい島への手紙』は、イェイツが1890年前後にアメリカの二紙に寄稿した文章を、ハーヴァード大学で教鞭をとるホレス・レイノルズが集め、イェイツによる序文をつけて出版したものである。イェイツは作品をどんどん改稿する癖があり、昔自分が書いた文章をそのまま本にして出版することにためらいをみせたが、一方で、自分が老いてなお目指しているものが、若かった頃考えていたことと大きく乖離していないことに改めて気づく。レイノルズとの出会いは、詩人にかつて夢中になったことを思い出させ、再び彼の想像力と創作意欲を掻き立てるきっかけを与えたということをイェイツの作品や書簡から証明し、イェイツが最晩年にたくさんのバラッドをものした理由を、この出会いによって与えられたインスピレーションに求めるという新しい読みの可能性を提示する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本務校におけるハイブリッド授業への対応、および新カリキュラムによる新しい授業の準備、科研費とは別の学内学術振興費による共同研究に追われ、自分の研究に割く時間がなかった。
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今後の研究の推進方策 |
イェイツは作品を何度も改訂したことで知られる。すなわち、完成原稿=印刷されたもの以外に、草稿が数多く残っている。アイルランドの国立図書館は言うまでもないが、ニューヨーク市立図書館のバーンズ・コレクションおよびテキサス大学オースティン校のハリー・ランサム・センターには、イェイツの手紙や草稿が数多く収蔵されている。コロナ禍になる前に、バーンズ・コレクションには何度か訪れて、作品がどんな紙に書かれているのか、用紙の手触りや、草稿の裏に何が印刷されていたかなどをチェックしてきた。 今後は、テキサス大学のオースティン校、ハリー・ランサム・センターで時間の許す限り丹念に原稿を調べ、草稿にアメリカの歌に関係するメモなどが残されていないかを調べる。また図書館を通じて、イェイツが講演旅行に訪れた大学や街の図書館、アーカイブにイェイツが訪れた当時の記事、写真、講演会のプログラム、余興の内容などが残されていないかを調べる。 教育に注力しなければならない環境にあって、研究に力を注ぐことは時に困難を感じる。本務校の学外研修募集などにも応募し、研究に集中できる立場を確保する努力を続けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で海外フィールドワークを控えた上に、ハイブリッド授業および新カリキュラムによる新しい授業科目の準備に追われ、ほとんど研究時間をとれなかった。2022年度または2023年度のフィールドワークに余剰額を使用したい。
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