研究課題/領域番号 |
21K00371
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
張替 涼子 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (70778175)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | female inheritance / Scottish chronicle / forged documents / kingship |
研究実績の概要 |
ハーディングの『年代記』に関する最も大きな関心事の一つである「偽造文書」の作成された経緯について研究を進めた。ハーディングは『年代記』を作成するのと同時に多くの偽造文書も作成し、それを国王に献呈している。また、『年代記』の中でもこれらの文書の存在について言及し、自らが語る歴史に信憑性を与えようとしている。 これらの偽造書の特徴として、スコットランドの特定の国王に関係するものだということが挙げられるが、これまでハーディングがなぜこれらの特定の国王を選んだのか、その選定の基準はどのようなものであったのか、また、これらの偽造文書を作成した具体的な目的はどのようなものであったのかについてはほとんど議論されてきていない。研究担当者はこれらの点について、ハーディングが使用したであろうスコットランドの材源との関係性に注目して考察を行い、その結果を国際学会で発表した。その論旨は以下のようなものである。 1. ハーディングは女性を通じた王権の主張の有効性をスコットランドの歴史書から学び取り、それを自らの歴史書に援用した。 2. イングランド国王が女性を通じて王権を主張することは諸刃の剣であり、アングロ・サクソンの系譜を通じでスコットランド国王がイングランドの王権を主張することを可能にする。 3. スコットランド国王のうち、アングロ・サクソンの系統を引き継ぐ国王の王権を否定するために偽造文書を作成した。 また、国際学会での発表をもとにした研究論文も執筆し、Studies in Scottish Literatureに投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ハーディングの『年代記』の本文に関する研究を進めたため、本来2021年度に実施予定であった写本及び初期印刷本の所在調査及び書き込み部分のデータの取り寄せが進まなかった。ただ、書き込みの調査・分析は本文の理解なくしては意味を持たないため、2021年度の研究に一定の意義はあったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は2021年度に実施予定であった写本や印刷本の所在調査を中心に進め、研究を円滑に進めるために必要なデータを揃えることを優先させる。 これと同時に『年代記』本文、特にスコットランドの材源に影響を受けていると考えられる部分の考察も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に実施予定だった写本や印刷本のデータ取り寄せにかかる費用、またそのデータを保管、分析するためのパソコンの購入費が去年から繰り越されている。本年度にこれらの費用を使用する予定である。
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