研究課題/領域番号 |
21K00374
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
丹治 愛 法政大学, 文学部, 教授 (90133686)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナショナル・アイデンティティ / イングリッシュネス / ヘリテージ / サッチャリズム / カズオ・イシグロ / 『日の名残り』 / D. H. ロレンス / 「イングランド、マイ・イングランド」 |
研究実績の概要 |
本研究は、田園にこそイングランドの本質的ナショナル・アイデンティティがあるという田園主義的イングリッシュネス観念が、いつごろ、どのような歴史的な脈絡のなかで生まれたか、それぞれの時代に他のナショナル・アイデンティティとどのように葛藤しながら、どのように変容しながら展開してきたかを概観するところにあるが、本年度はカズオ・イシグロの『日の名残り』についての論文の第二部を活字化した。その論文においてわたしは、サッチャー政権末期の1989年に出版された『日の名残り』を、ヘリテージ戦略によるナショナル・アイデンティティの強化/再構築という、1980年代のサッチャー政権の帝国主義的国家観と反動的歴史観を批判的に主題化しているポスト・ヘリテージ的作品として解釈した。 それとともに、わたしは『日の名残り』の原作を、その作品の(ジャブヴァーラ脚本による)映画化、および映画化されることなく終わったハロルド・ピンターの脚本を読み比べ、その三者のあいだに生じている主題的変化について、日本英文学会北海道支部の支部大会において口頭発表した。これについては口頭発表でのレスポンスを踏まえて内容をポリッシュしたうえで、『日の名残り』論の第三部として中央大学の『人文研紀要』に投稿する予定である。 さらに、本年度はD. H. ロレンスの「イングランド、マイ・イングランド」について、その1915年版と1922年版を比較しながら、第一次大戦中と大戦後において、反戦という基本的主題は同じでありながら、作品の主題的重点がどのように変化しているかを論じた講義録をまとめることができた。これも来年度中には論文として完成させたいと考えている。 年度末に関連資料の収集のため連合王国に出張する予定であったが、コロナの感染状況に鑑み断念せざるをえなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
懸案だったカズオ・イシグロ『日の名残り』論をほぼ完成させたうえに、D. H. ロレンス「イングランド、マイ・イングランド」の骨格を定めることができたため。ただ、懸案だった連合王国での資料収集をコロナ禍のために果たせなかったので、2022年度には実行したい。
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今後の研究の推進方策 |
イングリッシュネス研究には国民国家論(とくにベネディクト・アンダーソンとアントニー・スミスのもの)についての深い理解が必要であるが、それがこれまで疎かになっていたことに気づいた。ジョージ・エリオットの初期作品--『アダム・ビード』『フロス河の水車場』『サイラス・マーナー』ーーを、「国民国家と小説」というタイトルのもとで論じることで、いままでのわたしの研究に欠けていたその主題からのアプローチをこころみたい。結果については、2022年12月に開催される講演会で口頭発表することをめざしている。 また、2023年度の書籍出版にむけて必要となる写真資料をふくめ、必要な資料を収集するために、年度末の春休みには連合王国への出張を実現させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた連合王国での資料収集がコロナ禍のため不可能となったため。研究の完成と書籍の出版のためには必要な出張なので、来年度末には実現したい。
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