研究課題/領域番号 |
21K00376
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
本多 まりえ 明治学院大学, 文学部, 准教授 (60546878)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 動物表象 / 怪物表象 / シェイクスピア / ヒューマニティー/ヒューマニズム / 先住民 / 階級 / 肉食 / 菜食 |
研究実績の概要 |
本年度はシェイクスピア劇における動物表象の内、特に怪物(半人半獣)と犬を研究対象とした。10月に開催された日本シェイクスピア協会主催の学会では、シェイクスピアの『テンペスト』におけるキャリバンの動物および怪物としての表象に着目し、本作品の結びは人間同士の平和および人間と動物/怪物との平和といった平和主義を示唆すると結論づけた。また、同じく10月のLondon Centre for Interdisciplinary Research主催のInternational Conference on Ecocriticism and Environmental Studies学会ではシェイクスピアの『ヴェローナの二紳士』で描かれる犬のメタファーに着目し、主人公の一人プローティアスの召使ラーンスが飼っている犬クラブが、上流階級の屋敷で騒動を起こす場面に着目し、クラブの排尿は、古代ギリシアからの文学的伝統に従い、「軽蔑」を示唆する可能性があると指摘した。加えて、2021年度にESRA (the European Shakespeare Research Association) で発表した『アテネのタイモン』の菜食主義に関する発表原稿“‘Roots' in Timon of Athens and Pythagoras’s Vegetarianism”を “‘Meat,'‘Root,' and ‘Man's Unkindness' in Timon of Athens” というタイトルの論文へと書き直し、『明治学院大学英米文学・英語学論叢』139号に発表した。さらに、3月には彩の国さいたま芸術劇場にて一般市民に向け『ハムレット』に関する講座を行い、シェイクスピア時代の人々の動物に対する考えや『ハムレット』で描かれる動物表象について述べ、本研究で得られた知見を広く社会に還元した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度末から関心を抱いていた「怪物」というテーマについても研究が進み、人間と動物の関係のみならず、キャリバンなど動物・半人半獣として差別される人々についての考察も深まり、上記のシェイクスピア学会で発表ができたため。また、予定していた「犬」に関する研究が資料集めからテクスト分析に至るまで順調に進み、上記のInternational Conference on Ecocriticism and Environmental Studies学会で発表ができたため。さらには2021年度にESRA (the European Shakespeare Research Association) で口頭発表した『アテネのタイモン』についての論考をまとめるに当たり、口頭発表では扱わなかった怪物表象に関する考察を加えることで研究の幅が広がったと感じるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後もシェイクスピアや同時代の他の作家の劇作品で描かれる動物表象(特に馬、猫、鳥)について研究を深めたい。また同時に、それらテクストで言及されるケンタウロスなどの空想上の怪獣や、『テンペスト』のキャリバンや『夏の夜の夢』の変身後のボトムのような「怪獣」と呼ばれる登場人物も研究対象とし、オウィディウスの『変身物語』などの古代ギリシャ・ローマの神話を検証したり、当時の人種やジェンダーに関する文献を調査したりして、研究の幅を広げて行きたい。(註:当時、女性全般やアイルランド、アメリカ、アフリカなどの先住民は、理性のない動物という扱いをされていたため、動物表象の研究は人種やジェンダー問題と関わる。)
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は日本英文学会および日本シェイクスピア学会が東京で開催され、International Conference on Ecocriticism and Environmental Studiesはハイブリッド形式の学会でオンラインで参加し、旅費に使用する予定の分が余ったため。残額は2024年5月東北大学(仙台市)にて開催の日本英文学会全国大会で口頭発表する際の旅費に充てようとしたが、ゴールデンウィーク中で宿泊費が高く、旅費が足りなくなってしまったため、その旅費は大学の個人研究費から支出することとし、残額は動物研究に関する書籍(洋書)数冊の購入に充てる予定である。
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