研究課題
基盤研究(C)
本研究では、ヴィクトリア朝の時代精神を色濃く反映したディケンズ (1812-70) の作品を議論の俎上に載せ、明示的・暗示的に描かれた支配者側に立つ個人および集団の抑圧的権力――現実世界で理性と知性を標榜し、自らの幸福と利益を価値基準として強制する権力――の行使による「脅迫」について、当時の主要ジャーナルや非文学領域の文献における言説とも比較検討しながら、社会心理学的な観点から分析した。
英文学
産業革命後の急激なパラダイム・シフトによって生じたヴィクトリア朝の新たな社会風潮の中で従来の脅迫が変質した経緯と理由を明らかにすることによって、グローバル化の急激な進展と国際競争の激化の波にさらされ、ヴィクトリア朝以上に通信量が激増した現代の日本社会――特に高速データ通信のインターネット時代において従来の人間関係を変質させたSNS(会員制交流サイト)の仮想空間――に見られる匿名の悪意を伴った脅迫という喫緊の社会問題の改善に資するデータが得られた。