研究実績の概要 |
今年度は「現代アイルランド女性詩人とアイルランド語の伝統(フォークロア、伝説、神話)」をテーマに、詩の教授(Professor of poetry) を務めた三人の女性詩人エレーン・ニクィリャノーン、ポーラ・ミーハン、ヌーラ・ニゴーノルと「アイルランド語の伝統」の関係についての考察を進めた。アイルランド語の伝統がそれぞれにとってどういた位置付けにあるかの検討を行い、論文を執筆中である。三者の言語観、言葉の力への思い入れに、アイルランド語から英語への歴史的言語変化、アイルランド語観がどう影響しているかを検討した。歴史的観点から、この三人の現代詩人の意識と、19世紀末の文芸復興、アイルランド語復興運動の時期の作家たちの意識との違いを検討した。さらに、アイルランドの神話、伝説、フォークロアをどのように作品に取り入れているかという問題を詳細に追及している。 上記の目的を達成するために、ミーハンの作品The Statue of the Virgin at Granard SpeaksとThe Solace of Artemisを精読し、これらについての先行研究とリサーチを進めた。また、ニクィリャノーンが英訳したヌーラ・ニゴーノルのアイルランド語詩Oscailt an Tuama (Opening the Tomb)とTuras na Scri/ne (Pilgrimage to the Shrine)の原詩と英訳を比較検討した。また、ニゴーノルの詩篇「人魚」のマイケル・ハートネット訳とニクィリャノーン訳を比較しその違いの意味を考察した。人魚が陸に上がってきた状態への関心がニゴーノルとニクィリャノーンの間で共有されていることは二人のエッセイからも分かる。ニクィリャノーンの詩篇 Translations, The Girl Who Married the Reindeer, The Lady’s Tower, The Sun-fish, The Architectural Metaphor を精読し、ニクィリャノーンにとっての「異界」についての考察を深め、ニゴーノルとの接点と違いを明らかにした。
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