研究課題/領域番号 |
21K00389
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
芦津 かおり 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30340425)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シェイクスピア / 英語 / 日本語 / 翻訳 / 異文化 / 翻訳 / 翻案 |
研究実績の概要 |
国際プロジェクト(ASIA)の一環として、劇団りゅーとぴあによる舞台『リア王/影法師』(2004年)の研究を行っている。この舞台は、能の様式とシェイクスピア演劇、さらに日本の新劇の形式を折衷させながら、『リア王』を能舞台で上演したものである。毎週のzoom国際会議により、プロットやキャラクターの書き換え、原作との関係性、演技、演出(衣装、音楽、照明など)などに関わる包括的な分析をチームプロジェクトとして進めている。その一方、本課題との関連において私個人としては、とりわけ4か国語テキスト(日・英・中・韓、とくに日英)の分析と注釈の作成、さらにオンラインで出版予定の学術版に寄せるイントロダクションの執筆を進めてきた。本公演のテキストは、松岡和子の日本語訳が基本としながらも、それがさらに英語に翻訳されるという二重翻訳のプロセスを内包しているため、私が関心を寄せている、翻訳における文化的・社会的な屈折・変形が興味深い形で見て取れる。特にジェンダー表象・異文化表象という観点から、二重翻訳のプロセスを詳細にたどり、考察を進めている。その成果の一端は、近く出版予定のイントロダクションにも発表するが、別の論考にまとめる予定もある。2度の国際シンポジウムでは、本課題に関わる内容についての発表もオンラインで行った。 7月には日本比較文学会(関西支部)のシンポジウムで、夏目漱石のシェイクスピア受容・翻訳について発表した。漱石は、いわゆる「翻訳」をしたわけではないが、西洋と東洋の間で、言語的・文化的な差異を誰よりも強く感じつつ、両者の橋渡しを試みた人である。『行人』を例に、漱石の文学的「翻訳」について考察した。 また、悲劇『ハムレット』の日本語が、日本の作家の翻案のなかで変形・加工されていることを跡付けた論文「ヤマト・ハムレット七変化」を、『<キャラクターの大衆文化>』に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは異なる作品を取り上げることにはなっているが、もともと設定していたテーマに即した研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していたとおり、翻訳をすることにより、テキストに「変形」「屈折」が加わるということを、様々な作品の翻訳の分析を通して明らかにしてゆきたい。まずは、現在すすめている『リア王』の翻訳をめぐる研究を形にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張に行けなかったこと、英語論文の校閲が受けられなかったことが原因である。これらを次年度にはかならず行いたい。
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