研究実績の概要 |
英国17世紀全般にわたるオードの特質と変容過程を個々の詩人と作品を具体的に分析しつつ体系化する試みである本研究の初年度は、以下の書籍を精査することから開始した。Robert Shafer, The English Ode to 1660 (Princeton and London, 1918)、George N. Shuster, The English Ode from Milton to Keats (New York, 1940)、Carol Maddison, Apollo and The Nine: A History of the Ode (London, 1960) これら20世紀前半の包括的な先行研究に、そこに欠けていた現代批評理論を援用することで新たな知見を加え、17世紀のオードの歴史を分析し、2021年10月には、概観として再構築した第一稿を完成した。その際に本研究における考察対象としたのは、Ben Jonson の The Cary-Morison Ode、Abraham Cowley の‘The Praise of Pindar’、Andrew Marvell の‘Horatian Ode’、John Dryden の‘Song for St Cecilia’s Day’ であった。 その後、今回の17世紀英詩に関する国際共同研究の代表者であるLaura L. Knoppers (University of Notre Dame) との意見交換と校閲を経て、Cowley のセクションに新たな詩の分析を加えた。 また、17世紀のオードが変容、展開されていく通過点の先にある18、19世紀のオードの特徴を捉えるためトマス・グレイ、ウィリアム・ワーズワスのオードを考察し、ハーディの小説に影響を与えている例を論文、書籍として発表した。
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