研究課題/領域番号 |
21K00395
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
内丸 公平 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (50801495)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シェイクスピア / シェイクスピア受容 / 浦口文治 / 太宰治 / 近代日本 |
研究実績の概要 |
1930年代におけるシェイクスピア の文化動員を考察する手がかりとして浦口文治のハムレット解釈、および太宰治の『ハムレット』翻案「新ハムレット」を同時代の精神史を背景に分析した。その成果として、(1)2022年6月26日に関西シェイクスピア研究会にて「近代日本におけるハムレットのロマン主義的転換ー浦口文治から太宰治へ」という題目で口頭発表し、(2)2023年度出版予定の国際ジャーナル「Cahiers Elisabethains」に’Osamu Dazai’s The New Hamlet as an Allegory of the Young Generation in Japan’として掲載される予定である。これらの研究で申請者は、浦口が打ち出したハムレット像が「男性的なハムレット」であったことを指摘し、その背後にあったのはロマン主義的な決断できない思考に対する浦口の批判であり、それは1930年代の日本の政治的腐敗への怒りと密接に結びつくものであったことを指摘した。しかし、浦口の解釈を読んだ後に『ハムレット』を翻案したはずの太宰が描いたハムレットは、浦口のハムレット、あるいは原作のハムレット以上に、何も決断しない人物として表象されていることを指摘した。その理由として、太宰の生きた時代の精神史を参照しながら、あらゆるクライテリオン (規範)を喪失した作者の自己像が投影されているのではないかと論じた。「新ハムレット」を太宰の精神史から論じることで、新たな解釈を提示できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太宰治の「新ハムレット 」に関する研究の成果を、関西シェイクスピア研究会において口頭発表し、またそれをベースにした論文が国際ジャーナル「Cahiers Elisabethains」に受理されており、研究実施計画に基づき、極めて順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、2023年度は宣戦の詔勅が煥発される1941年から、敗戦を迎える1945年におけるシェイクスピア受容を考察予定である。イギリスでの資料収集と国内外での研究発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)コロナ感染症によって国内外の学会がオンラインになった、(2)入試担当委員に抜擢されたため、資料調査のために海外に出張することもできなかった、ために当初予定していた旅費を使用することができなかった。2023年度には、海外への資料調査及び国際学会における現地発表を行う予定である。
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