最終年度にあたり、シェイクスピアの上演研究への現象学的アプローチの利用をさらに進めるため、国内外での上演および上演録画や海外の上演のストリーミング映像の視聴をさらに実施した。一方で論文執筆も進め、7月末に開催されたBritish Shakespeare Association (BSA)の年次学会では、’To be blind or not to be blind?: the complex body in all-female theatres’のタイトルで研究発表を行った。登場人物の性別や人種により配役される役者を限定しないblind castingという特殊な配役について、地元及び北米からの会議出席者と意見を交わすことができた。また、現在配役に政治色が強いイギリスで、芸術面での受容に焦点を当てた現象学的なアプローチについて議論する機会を得た。リバプール大学で開催された学会出席後は、ロンドンに移動し、特殊な配役の宝庫となっている劇場(グローブ座など)で視察を行った。秋には、清泉女子大学において、女性のみでの上演を行う学生たちの前で講義を行い、アンケート調査を行う機会を持てた。Shakespeare Intercultural Archive (A|S|I|A)ジェンダー・エディッションのリード・エディターとして、 劇団スタジオライフによる『十二夜』の注釈入れの共同作業(イギリス人およびシンガポール人)の他に、現象学的 なアプローチで上演を紹介したcritical introductionを執筆した。年度末には、成果発表として、Routledgeから出版されているShakespeare誌に論文を執筆し終えたところだ(論文提案後寄稿を認められたもの)。
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