研究課題
基盤研究(C)
本研究は広義の観客研究であるが、従来の観客研究の方法では解明できない、感情移入などの芸術作品への反応や意識下に生じる未分化の知覚を理解しようとする試みであった。観客反応という掴みどころのない現象を理解するために、上演時の物質的環境と偶然性を現象学的視点から分析した。具体的には、シェイクスピアの上演作品における特殊な配役に焦点をおき、観客の知覚に負荷がかけられた場合の受容を研究対象とし、これに今まで行ってきた上演の詳細な分析に結びつけて、観客研究の新たな方法が提案できたと考える。
初期近代イギリス演劇
観客反応のメカニズムを解明するために、具体的な上演環境を現象学的に分析するという試みを通して、方法論としての現象学がシェイクスピアの上演研究、特に観客研究において有用であることを提案できたと考える。特に、近年の多様性論争の結果として実施されている特殊な配役(異性配役、ジェンダー・ベンディング、カラー・ブラインド配役など)における役者の身体によって作られる環境を考慮した観客研究には、現象学的な視点からの環境分析という手法、新たな方向性を示した。