研究課題/領域番号 |
21K00402
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
虎岩 直子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (50227667)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポストヒューマン / 他者との共生 / 環境 / 視覚芸術と文学 / アイルランド現代詩 / シネード・モリッシー / 病気 |
研究実績の概要 |
当該研究は前課題研究「共生を目指して伸長する文化表象間の借用・反復のネットワーク」の延長上にあるもので、本年度は両研究にまたがる口頭発表'Balancing on the Border in Sinead Morrissey's Poems'を7月下旬オンラインによる国際アイルランド文学研究学会で行った。 ついで10月に国際アイルランド文学研究学会日本支部で当該研究のテーマに大きく関わる'Illness and Literature in Ireland'シンポジウムのパネリストとして発言した。 12月には当該研究者が「病気と芸術」というタイトルでシンポジウムを企画した。美学者の谷川渥氏、美術評論家の相馬俊樹氏、文学者・丸川哲史をパネリストとして、美術評論家の中村隆夫氏を司会者兼コメンテイターとして招いた当シンポジウムはオンライン開催を余儀なくされたが、130名ほどのオーディエンスがあり、成功を収めた。司会者による中世から現代に至る美術史を中心としたイントロダクションに続き、谷川氏は大正時代の日本文学における病気表象、丸川氏は『細雪』の病気イメージの意味、相馬氏は20世紀初期にヨーロッパで活躍したアメリカ人女性画家ロメーン・ブルックの絵画について、本研究者はスペイン風邪流行時期のアイルランド文学における病気表象を概観した後、21世紀アイルランド詩人シネード・モリッシーの詩における病気と革命のつながり、新たな共生を求める視野を創生するきっかけとしての「病気」について論じた。 このシンポジウムの成果は著書として2022年度上半期に東信堂から出版される。 さらに3月には前研究課題と連動した「シネード・モリッシーにおける詩の弁護:Modest Witness, not invisibleとして」を出版して、環境を含む他者との共生を目指す現代世界の動きにおける芸術の役割について論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究はパフォーマンスや短期期間限定の展覧会、実作者へのインタヴューなどのため海外出張による資料収集が不可欠であるが、新型コロナウイルス蔓延のため課題研究スタートの時点より出張が不可能である。そのため、日本国内での資料収集や国内作家へのインタヴュー、研究者との活発な意見交換やシンポジウムなどを行ってはいるが、当初の計画からはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は当該課題研究が当初予定していた資料収集地への出張が可能になる見通しである。さっそく夏季休暇を利用して、課題研究と関連する国際学会(アイルランド共和国リムリック大学主催、国際アイルランド文学研究会大会)に口頭発表参加して、研究者や作家たちとの意見交換を図る予定である。本研究者の発表はエコクリティシズムの観点から現代アイルランド詩について論じることになる。 8月に出張滞在予定の英国とドイツでは、環境との共生のもとに成立しているランドアートを主として収集対象とする。またChris Druryなど現在制作中のランドアート作家のインタヴューをおこなう。合わせて新型コロナウィルス下におけるアートの役割を積極的に示している展示を大きな国立美術館レヴェルに加えて中小画廊を回って収集する。 10月には国際アイルランド学会日本支部の大会シンポジウム"Silences and the Silenced in Irish Writing'で発言する。言語という主たる支配権力集団が用いる表現手段が作っている言語表象空間で「共生」してきた被支配グループの表現を探る。 年度末にはポストヒューマンと芸術というテーマでシンポジウムを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延により予定していた海外出張、国内調査が不可能になったため、本年度は研究費を使用しなかった。 2022年度は夏季と春季に海外出張を行い活発に資料収集、研究者との意見交換、実作者へのインタヴューを行い、さらに当初は予定していなかったが本年度は日本国内の研究者によるシンポジウムを開催したい。
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