研究課題/領域番号 |
21K00403
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
竹野 富美子 東海学園大学, 教育学部, 准教授 (20751746)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 科学 / 翻訳 / アメリカ文学 / 英語圏文学 / 19世紀 / アメリカ研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ラルフ・ウォルドー・エマソンやヘンリー・デイヴィット・ソローなどの19世紀アメリカ文学の諸作品に焦点をあて、彼らの自然への考察を、19世紀の自然史のロジックと翻訳理論の観点から考察することにある。本研究では自然史研究に深くかかわると同時に、海外の諸文化を積極的に翻訳し、自国の文化独立を志したエマソンやソローの自然観の変遷を中心に、ヨーロッパへ移植/翻訳されたアメリカの「自然」観も参照し、検討する。 令和3年度の研究実績は以下のとおりである。2021年9月、日本ナサニエル・ホーソーン協会名古屋支部において、エドガー・アラン・ポーの作品にみられるグローバルな視点についての考察を発表した。2022年3月にはアメリカの学術団体Modern Language Associationの地方支部、北東支部MLAの年次大会で、エドガー・アラン・ポーの短編「鋸山奇譚」に見る南部の自然史と作品とのかかわりについて、口頭発表を行った。エドガー・アラン・ポーはフランス語も理解し、自身の著作においてキュビエの論文の翻訳も行うなど、自然科学および海外文化の翻訳に詳しい。発表を通して、南部の自然とその自然資源をめぐるグローバル・マーケットについて、ポーはどのように解釈/翻訳したかについて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、初年度となる令和3年度は、19世紀米国の自然史研究及び近年の翻訳理論に関する先行研究の資料や書籍の収集、整理と解読、国内の学会参加のみを予定していた。しかし、2021年9月に日本ナサニエル・ホーソーン協会名古屋支部9月例会で研究発表し、2022年3月にはアメリカのメリーランド州で開催された北東支部MLA年次大会への発表申請が受理され、オンラインによる研究発表を行うことができた。同じセッションでの発表者らの助言や知見に触れ、本研究課題において有益な気付きを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度には令和3年度の成果を踏まえて、引き続き文献の収集と先行研究の整理を行う。令和3年度に参加したNortheast MLA年次大会で得られた知見、助言をもとに資料収集、資料分析を継続する。特に同大会の口頭発表でのエドガー・アラン・ポーの作品に見られた自然資源をめぐるグローバル・マーケットの影響の分析から、ソローに見られるグローバルな視野と外国文学への興味と翻訳活動の背景にも、グローバル・マーケットの存在が見られるのではないかとの気付きがあった。これらの成果を令和4年にわたって研究発表や論文の形にし、成果報告を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度となる令和3年度は、先行研究の資料や書籍の収集、整理と解読、国内の学会参加のみを予定しており、国際学会への発表のための渡航費などは計上していなかった。しかし2022年3月にアメリカのメリーランド州で開催予定だった国際学会での研究発表申請が受理されたため、前倒し支払い申請を行い、アメリカに渡航するための準備を整えた。しかし新型コロナ感染状況の悪化により、渡航が困難となり、開催機関に問い合わせたところ、ハイフレックス形式による研究発表が可能となったため、海外渡航費用が未執行となり、次年度使用額が生じた。
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