本研究の目的は、エマソンやソローの自然観を、19世紀の自然史をめぐる言説空間や北米における自然史研究の重層性に目を配りながら、エマソンやソローの自然観を「翻訳」を鍵概念として問い直すことにあった。本研究の学術的意義は、近年の米文学研究における問題意識を共有し、国際間の知的ネットワーク、国際政治的背景などに着目し、19世紀米文学を俯瞰的に把握しようと試みたこと、さらに自然史研究を自然の「翻訳」作業ととらえることで、エマソンやソローが実際に行った翻訳や、翻訳への考え方を、翻訳研究の成果をもとに分析しこれまでの研究では捉えられてこなかった、エマソンやソローの自然観に新たな考察を加えたことにある。
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