研究課題/領域番号 |
21K00406
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研究機関 | 東北文教大学 |
研究代表者 |
阿部 裕美 (今井裕美) 東北文教大学, 人間科学部, 教授 (10248726)
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研究分担者 |
佐藤 恵 東北福祉大学, 教育学部, 准教授 (50341730)
梶 理和子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 准教授 (60299790)
川田 潤 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70323186)
吉田 直希 成城大学, 文芸学部, 教授 (90261396)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 感受性 / 感覚/感性 / 肉体・精神・魂の関係性 / 科学言説 / 宗教言説 / ジェンダー構造 |
研究実績の概要 |
2021年度においては、研究の第1段階として、感受性について、以下の5つの部門に分かれて、各研究者のこれまでの研究に基づき、それぞれ複数の研究者で意見を交換しつつ議論と情報交換を行った。(1) 学術部門:科学、出版、啓蒙等。 (2) 国家部門:商業、軍事、政治等。(3) 文化部門:音楽、絵画、娯楽等。(4) 主体部門:ジェンダー、異性愛・同性愛等。(5) 宗教部門:カトリック、メソジスト、国教会等。 以上の部門の議論を共有した上で、各研究者が関連するテーマ・テクストと結びつけ、以下のような研究を行った。1)啓蒙主義時代の「感性」に着目し、18世紀後半エジンバラで刊行された定期刊行物を中心に感性および商業主義につながる異国表象の考察。2)商業社会の誕生をハーバーマスの公共圏概念を軸にジェンダー、フェミニズムの視点から再検討し、コーヒーハウス批判の言説と 感受性文学の歴史的変遷をジョン・ゲイの文学作品で確認。3) 商業社会の進展におけるジェントルマンの変容とその感受性との関りについて、19世紀初頭の英国小説に描かれる新旧ジェントルマンの表象に焦点を当てた考察。4) 王政復古以降に改作されたシェイクスピア作品(ネイハム・テイトやコリー・シバーら男性作家による)を原作と比較検証することで、17世紀における政治、国際状況の変化、商業社会の台頭に伴う感受性の変容の確認。5) ニコラス・ロウの演劇における愛国主義の醸成について、ジェンダー、宗教的観点からの表象についての検討。 以上のように、複雑な文化的文脈の中で〈感受性〉が果たした役割を明らかにすることで、次年度の研究の基盤を確認した。とりわけ、上記(1)(2)(5)に関連する報告が論文発表・口頭発表としてなされており、さらに、年度末にはオンライン研究会を実施し、各担当者の途中の成果を共有し、進捗状況の確認と今後の研究の方向性を検討しており、それらをもとに、各自の研究をより深める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集の程度や研究者間の検討作業の時間にやや不十分な点も見られるが、おおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度においては、第2段階として、初期段階での成果を研究代表者・分担者間での議論を通してまとめ、研究協力者(文学以外の歴史、哲学、科学、宗教等の研究者)との意見交換を行うために研究会を開催する。それによって、近代商業社会における<感受性>の問題が美意識、共感、理性などと結びつき、新たな価値観の形成過程で果たしていた役割を明らかにする。このような方針に基づき、研究担当者内で部分的に共同しつつ、専門分野の研究会・学会において、口頭発表やシンポジウム担当などの活動により、当初の研究活動のプロセスをたどる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、調査目的の旅費やそれに伴う物品費・人件費用の使用に至らなかったため、差額が発生したものである。次年度においては、旅費使用の計画を慎重に検討し、コロナ禍による行動制限の状況や、国際情勢による制限等を考慮に入れ、早めに複写などを活用して、確実に予算執行を目指す予定である。
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