| 研究課題/領域番号 |
21K00409
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| 研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 将尚 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (90332056)
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| 研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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| キーワード | 懐疑的世代 / 理念の喪失 / 東部国境の再承認 / アイデンティティ |
| 研究実績の概要 |
当該年度は,クリストファーゼン,レーダーといった先駆者に追随する形で,70年代から80年代にかけて盛んに否定論を主張したエルンスト・ツュンデル,および90年代,80歳を過ぎてから否定論者となったエルンスト・レーマーに着目し研究を行った。いずれの論者に関しても,なぜ否定論を主張するに至ったのかを主たる問題とした。 1.ツュンデル:当該人物を分析する際に,報告者が拠り所としたのは,ドイツの社会学者ヘルムート・シェルスキーの『懐疑的世代』(1957年)である。1939年生まれのツュンデルは,シェルスキーが定義するまさに「懐疑的世代」に当たる。つまり,幼少期に戦後の混乱期を経験し,既存のいかなるものにも安住の場所を見いだせない世代である。ツュンデルには,元ナチであるクリストファーゼンやレーダーのように,戦後もしがみつくことのできる理念はない。その「理念喪失」というよりは,むしろ「理念未獲得」な世代の一員が獲得できた初めての理念として,ホロコースト否定論は機能したのではないか。 2.レーマー:彼は,再統一後のドイツの問題を3つ指摘している。①東部地域の喪失(=再統一ドイツが,東独とポーランドの国境を,新ドイツ=ポーランド間の国境として再承認させられたことを指す),②アメリカ軍の駐留継続,③東欧からの難民の大量受け入れ,である。そのうち,彼の否定論の要因を考察する際に重要なのは,①と②である。これらの問題はいずれも,ドイツが第二次大戦の敗戦国であるという事実を改めて突きつけてくるものであった。レーマーは戦時中,その武勲によって終戦間際に大佐にまで昇進していた人物である。90年代初頭の世界情勢の大きな変化は,レーマーにとってこれまでの静かな世界,すなわち長らく保持してきた,自分は軍部の功労者であるというアイデンティティのもとで安住できた世界を揺るがす挑戦として感じられたのである。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツにおけるホロコースト否定論の先駆とも言えるクリストファーゼンに始まり,当該年度までの研究において,ドイツの主要な否定論者の言説を時系列に概観し,彼らがなぜ否定論を展開するに至ったのか,それぞれの要因を明らかにすることができたため。
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| 今後の研究の推進方策 |
報告者は,研究期間を1年延長する申請を提出し,過日その許可が下りた。当該申請を行ったのは,上記「研究実績の概要」に記したような研究を遂行していく中で,ホロコーストを否定しない――つまり,ホロコーストの残虐性をつぶさに描写している――言説ならば何の問題もないのか,という新たな疑問が生じたためである。報告者はすでにこの観点からの研究を開始しており,現在,既存のホロコースト文学に一石を投じたオーストリアの作家エーリッヒ・ハックルの文学作品『アウシュヴィッツの結婚』(2002年)の分析に当たっているところである。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
理由として,以下の2点を挙げることができる。 1.2023年度中にメニエール病を発症したことにより,長時間の飛行機移動を伴うドイツ出張が不可能となったため(しかし,国内で入手できる資料を効果的に用いることにより,先に記したように,十分な研究成果を上げることができている)。 2.また,前述のように報告者は,当初の研究を遂行していく中で,本テーマに関する新たな問題を発見するに至ったが,この課題発見が全国学会発表後の11月であり,この時点で研究期間の延長申請を行うことを決め,それ以降の支出を必要最低限に抑えたため。 以上2点である。これを受けて2025年度への繰越額は,新たな問題に対して何らかの回答を提示するために行う,国内での資料収集活動に主に充当されることになる。ただし,病状が回復した場合は,ドイツへの出張費用とする可能性もある。
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