マルセル・プルースト(1871-1922)の作品において古代ギリシア・ローマの文学作品を原典とする神話、歴史などのモチーフは頻繁に言及される。しかし作家はホメロスやウェルギリウス等に関してまとまった論考を残すことも、小説中で批評することもなかった。本研究は、断片的にしか言及されないこれらのモチーフの背後にある体系を解明することを目指すものである。さらに、これらのモチーフが風景描写のなかで用いられていることに着目し、従来,絵画や建築との関連で論じられることが多かった風景描写を,テオクリトス、ウェルギリウスなどの作品を模範とした「悦楽境locus amoenus」の伝統の中で再考した。
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