研究課題/領域番号 |
21K00417
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武田 利勝 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (80367002)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロマン派の言語哲学 |
研究実績の概要 |
2021年度には、アウグスト・ヴィルヘルム・シュレーゲルが1790年代後半に展開した言語論を中心に研究を進めた。その際に軸を成したのは、1795/6年に彼がシラー主宰の雑誌「ホーレン」に掲載した論文「詩、韻律および言語についての書簡」(「韻律論」)と、1800年前後にイェーナおよびベルリンで行った一連の講義『芸術学』との比較考察である。 報告者は、「韻律論」における核心的主題として、特にそこで展開されるリズム起源論に着目した。シュレーゲルにおいて、リズムの起源はすなわち言語の起源と同義である。そこから、彼のリズム=言語観はヘルダーにおける言語起源論との親近性を強く持つことが明らかとなったが、しかし反面、ヘルダー的な汎神論と完全に重なることはない。それというのもシュレーゲルにおいては、カント=フィヒテ的な批判哲学の影響も色濃く見出されるからである。 汎神論と批判哲学、この両極のあいだを浮遊しつつ独自の言語起源論を立ち上げようとする彼の試みは、ひとまず「韻律論」において失敗する。というのもシュレーゲルは、自らのリズム論において両極の調停を目論みながら、論理的自己矛盾に落ち込んでしまったのだ。 報告者は、彼がその後二つの『芸術学』講義で展開した「芸術の自然史」構想を新たな言語起源論のプロジェクトと位置付け、そこでいささか散漫なかたちで叙述される言語理論に一定の体系的意味付けを付与したうえで、それを初期ロマン派におけるさまざまな言語観の詩学的・哲学的集大成として特徴づけた。なお当該年度の研究成果は、共著書『ノモスとしての言語』(ひつじ書房、2022年5月)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
AWシュレーゲルの言語美学に関する本研究課題に従事する傍ら、その弟フリードリヒ・シュレーゲルの詩学的戦略としての言語使用法にも関心が向かったため、報告者は、当該年度後半を特にその小説『ルツィンデ』の言語分析に集中させた。その成果は論文「フリードリヒ・シュレーゲル『ルツィンデ』における両義性の詩学」(『文学研究』、2022年3月)として公表済みである。 その結果、当該年度後半以降、本研究課題はあまり進捗していない。
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今後の研究の推進方策 |
アウグスト・ヴィルヘルム・シュレーゲルの言語感性論の研究を進めるにあたって、彼が強く影響を受けたベルンハルディの言語学を分析する必要がある。2022年度の前半は引き続きフリードリヒ・シュレーゲルの研究を進めるが、遅くとも後半からは、ベルンハルディの研究に取り掛かる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度中は、依然としてコロナ禍のため各種学会がオンライン開催となったため、予定していた学会参加のための交通費が生じなかった。未使用分については、次年度中に国内出張費に充てる予定。
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