研究課題/領域番号 |
21K00420
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
Pekar Thomas 学習院大学, 文学部, 教授 (70337905)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 亡命 / 亡命文学 / ジャポニズム / 文化接触 / 移民 / 移民文学 / 東アジア受容 / トランジット移住 |
研究実績の概要 |
1) 22年度は、「トランジット移住」の地としての日本へのユダヤ人亡命研究が中心となった。演劇・音楽研究者Ralf Eisinger氏、学習院大学博士課程の赤塚愛氏と共同で、ユダヤ人移民として1936年に来日し48年までNHK交響楽団の指揮者を務めたJoseph Rosenstock(1895-1985)が出版した自伝をドイツ語に翻訳し、広範囲に渡る注釈、解説を加えて出版する準備を行った。日本での亡命をめぐる理解、日本における西洋音楽のトランスカルチャー的歴史を理解するために、非常に重要な資料となる。オリジナル原稿は英語で執筆され日本語に翻訳されたものだが、一部を除いて元の原稿が失われているため、ドイツ語への翻訳は日本語の出版物から行った。ドイツ東洋文化研究協会が自伝のドイツ語翻訳の出版に関心を示しており、今年中に出版される予定である。 2) 「トランジット移住」の地としての東アジア分析の観点から、上海への亡命研究に関して、23年1月にKerstin Schoor教授(ヴィアドリアナ欧州大学)が開催した亡命・移民研究会にて口頭発表を行った。また、本分野において大きな枠組みでの共同作業が進行中である。25年開催第15回IVG(国際ゲルマニスト学会)にて、Christine Frank教授(Berlin自由大学)、Philippe Wellnitz教授(モンペリエ第3大学)とセクション「20世紀と21世紀の危機の象徴、または発見の象徴としての東アジアの言説」を行う準備をしている。19世紀後半からシノワズリやジャポニズムの形で流行した東アジアの「エキゾチックな」芸術形式に対するヨーロッパの熱意が、20世紀以降のヨーロッパの危機意識や文化的刷新への欲求に、どのように結びついていったか論じる。セクションリーダーを務め、口頭発表も行う準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IVGのセクション開催に向けて新たな共同作業が生じたため、ユダヤ新聞におけるアジアへの移住の喧伝に関する研究に遅れが生じており、補う必要がある。なお、中国の視点からのアジア亡命研究の見直しという観点では、最近の研究文献、特に中国語による研究文献に関して、 (西洋言語で入手できる限り)常に取り組むことができている。引き続き、亡命国としての日本、特に、「トランジット移住」の地としての日本がどのような意味を持っていたのかを明らかにすることは、ローゼンシュトックの自伝を理解するためにも重要である。
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今後の研究の推進方策 |
Ralf Eisingerと赤塚愛との共同作業により、Rosenstockの自伝の出版に向けた作業がほぼ完了した。多数の注釈、索引、解説を完備した原稿は、本年6月に審査のために OAGに提出され、その後、出版される予定である。出版のため、引き続き、校閲など必要な作業を行っていく。 グラーツ/オーストリアで開催される IVG 2025 での東アジアの言説セクションの準備作業は継続される。これに関して、上記のFrank教授、Wellnitz教授との定期的なミーティングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額が生じた主たる理由はコロナによる海外での学会発表や研究調査制限による渡航費用の未消化である。2021年度はゼロ、2022年度も一部再開であった。今年度はコロナによる活動制限を外し海外での活動を開始するために、その資金として使用する計画である。また、当初予定していた研究者を招聘した国内でのシンポジウム開催も実施予定である。ただし、今年度末に開催できるか次年度にかかるかは調整する必要がある。
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