| 研究課題/領域番号 |
21K00424
|
|---|
| 研究機関 | 日本大学 |
|---|
研究代表者 |
渡邊 徳明 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (20547682)
|
|---|
| 研究分担者 |
嶋崎 啓 東北大学, 文学研究科, 教授 (60400206)
松原 文 立教大学, 文学部, 特定課題研究員 (70827245)
高名 康文 成城大学, 文芸学部, 教授 (80320266)
伊藤 亮平 松山大学, 法学部, 准教授 (80781070)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
| キーワード | 中高ドイツ語 / 宮廷騎士文学 / 遊戯 / パロディー / 文化的コード / 貴婦人 / 名誉 |
|---|
| 研究実績の概要 |
2021年12月のアーサー王学会シンポジウム「老いは愚かさを克服できるのか？ ―中世文学における老いと成熟との不連続性をめぐって―」では、1200年頃の「偉大な」文学が、中世後期に規範とされ、更にはパロディの対象とされ、社会各層の文化の土台となった様子を論じた。議論の中心は「人は老いることで賢くなり、無知や肉と情欲の害から離れることができるのだろうか」という問いであった。2022年12月のアーサー王学会シンポジウムでは、13 世紀以降のパロディー的文学作品を扱った。1200年前後の古典的作品に描かれる人物たちは、宮廷社会のコードを共有して役割を演じる遊戯の参加者であり、恋愛奉仕はその代表的な例である。貴婦人が称賛され聖化されると共に、その肉体性が強調され俗化される二面性が見られる。この「宮廷的遊戯」を枠組みとして、財産や身分を守るシステムとしての恋愛、肉感的な恋愛遊戯、 パロディー化と再解釈、農民や醜さの描写の意味などが議論の対象となった。2023年10月の日本独文学会シンポジウムでは、古典的中高ドイツ語作品における婦人の「名誉」が中心テーマであった。名誉は、騎士達が能動的に苦難や冒険によって獲得するのに対し、婦人達の名誉は受動的に与えられる。名誉が婦人にとっていかなるものであったのか、騎士における名誉との違いや共通性にも注目しながら考察した。騎士や貴婦人にとって、宮廷的振る舞いのコードを共有するという一種の「遊戯」が行われるが、その宮廷的恋愛で貴婦人が名誉を得るには、単なる表面的な行動にも増して、むしろ恋愛における内面的な誠実こそが問題とされる。「名誉」の外見性と内面性が問題となり、恋愛「遊戯」も、宮廷社会のコードを共有しつつ、その解釈は多義的で、内面の深く変わらぬ思いが読み取れることが示された。このシンポジウムの成果は2024年度中に論集化される予定である。
|
