最終年度はこれまで同様に研究課題に関連する文献調査を進め、年度末に本研究課題の総仕上げとして、十九世紀フランス文学研究の第一人者たるジャック・ネーフJacques Neefs(パリ第八大学、ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授)を招聘し、立教大学と中京大学において学術イベントを開催した。各学術イベントの概要を示すことで本年度の「研究実績の概要」とする。 1)2024年3月5日開催、公開セミナー「フローベール―美学的暴力と共感」(於立教大学)。司会:菅谷憲興(立教大学)、山崎敦(中京大学)。発表者:ジャック・ネーフ(パリ第八大学、ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授)。 2)2024年3月10日開催、国際シンポジウム「文学と汎神論」(於中京大学)。司会:山崎敦(中京大学)、鈴木啓二(東京大学名誉教授)。発表者:村松正隆(北海道大学)、数森寛子(愛知県立芸術大学)、菅谷憲興(立教大学)、ジャック・ネーフ(パリ第八大学、ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授)。 本国際シンポジウムにおいて、山崎は十九世紀フランスにおける汎神論をめぐる哲学的・神学的論争を概説し、村松氏は汎神論と哲学との関係を論じ、数森氏はユゴーにおける汎神論を、菅谷氏はフローベールとボードレールにおける汎神論を、ネーフ氏もまたフローベールを中心に文学と汎神論との関係を論じた。本研究課題の副題は「文学・哲学・宗教学」であるが、本シンポジウムにおいて、ユゴー・フローベール・ボードレールの各文学作品の具体的な分析を通して、汎神論をめぐる文学・哲学・宗教学の錯綜した諸関係が明らかになった。また、各発表後の質疑応答の際、活発に議論が交わされ、本研究課題のさらなる展開が示唆された。
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