研究課題/領域番号 |
21K00427
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
宮嵜 克裕 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (00411075)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マラルメ / 韻律法 / フランス詩法 / 脚韻 / エロディアード / 生成論 / ポリフォニー / 発話行為 |
研究実績の概要 |
後期マラルメ詩学の根幹をなす詩論「詩の危機」や『音楽と文芸』には、伝統的定型韻律に基づく高踏派の〈構成の詩学〉と、自由韻律に依拠する象徴派の〈イメージの詩学〉との間で変動するフランス詩法自体の「危機」が反映している。本研究は、このような危機的状況下でマラルメが実践した詩法に関し、詩人晩年の〈内的イメージ=リズム〉という概念に着目し、その後期韻文詩に内在する韻律・律動の特異性とイメージ生成プロセスを生成論的・ポリフォニー言語論的観点から仔細に解析し、後期マラルメの詩法の新たな側面を解明することを主たる目的とする。初年度の研究計画は、主として次の3つの調査と考察を遂行するものであった。 (1)19世紀後半のフランス韻律法の変容過程を歴史的に位置づけるため、16世紀から20世紀に至るフランス韻律法の関連文献を網羅的に収集し、詳細な書誌を作成する。 (2)上記(1)を踏まえ、フランス詩法の主要な韻律規則に関する定義を歴史的に比較検討する。とりわけ定型韻律に重大な影響を及ぼすenjambement, rejet, contre-rejet, rimeを中心に、定義の歴史的変遷を考察する。国内で入手困難な一次文献に関しては、フランス国立図書館等で調査を実施する。 (3)上記(2)に基づきながら、マラルメ『エロディアード』草稿群の韻律特徴を、テクスト生成論的観点から分析する。 以上の作業のうち、(1)に関するフランス韻律法の書誌作成はほぼ完了しつつあるが、(2)に関しては、新型コロナ・ウイルス感染症による渡航規制のため、フランス国立図書館での文献調査は中止せざるをえなかった。このため、国内で入手可能な二次文献と、フランス国立図書館のサイトで公開されている一次文献に限定し、上記(2)の作業を行った。(3)に関しては、プレイヤード新版『マラルメ全集』の草稿の転写に依拠しながら韻律の分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究初年度である2021年度は、新型コロナ・ウイルス感染症による渡航規制のため、国内で入手困難な文献に関しては、フランス国立図書館での文献調査の中止を余儀なくされた。このため、未読の資料もかなり存在し、フランス韻律法の諸規則の定義に関する網羅的な調査は限定的な段階にとどまった。この2021年度に中止された調査は、2022年度以降に実施することになる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に渡航規制のため遂行できなかったフランス国立図書館でのフランス韻律法関連の文献調査を実施する。また当該年度前半は、2021年度の『エロディアード』の主要な韻律技法の解析結果に基づき、今度はそれらの韻律と譬喩形象との関係を発話行為論的観点から考察する。 2022年度後半は、考察対象を『半獣神の午後』まで拡張し、上記分析と同様に、主要な韻律技法を中心に解析する。同時に、『半獣神』草稿群との異同も視野に入れ、生成論的観点から分析を行う。なお、この草稿の解析に先立ち、夏期休暇中に渡仏し、未見の草稿調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナ・ウイルス感染症パンデミック下による渡航規制のため、フランスでの文献調査を中止せざるをえず、そのため渡航費用を国内で入手可能な関連文献の購入に充当したためである。しかし、渡航費用全額を関連文献の購入に割り当てることができなかったため、差額が発生し、次年度使用額として残ることとなった。この次年度使用額は、次年度の関連文献の購入費に充当する予定である。
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