世界文学の古典は、原文で読まれる以外に翻訳や翻案を通して広く普及してきた。1940年代のアメリカで「発明」され世界各国に普及した「名作文学の漫画版」は、文学研究者や教育者から否定的に見られることが多かったが、1970年代以降、独自の解釈にもとづく創造的な翻案も見られるようになった。本研究では、基本的には「読み物」である文学と漫画のあいだには独特の緊張関係と親和性があったこと、ヨーロッパにおける文学の漫画化において漫画はメディアとしての固有性をどのように発揮してきたか、もしくはその固有性を犠牲にしてきたか、それは社会における漫画の位置づけとどのようにかかわっているのかを明らかにしようと試みた。
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