リュト・ジルベルマン著『パリ10区サン=モール通り209番地 ある集合住宅の自伝』(2020)が、現実志向と遊戯性を併せもつペレックとどのような関係にあるのかを考察した。ペレックの小説において、通時的共同体の出現はウリポ的制約の適用と無関係でないこと、また、ジルベルマンは被調査者において感情の暴発を避けるためにドールハウスの家具を用いながらインタビューをすすめているのだが、そのことがウリポの制約がもつ「感情の制御」という機能 に通じていることを示した。つまり、『サン=モール通り209番地』は、『人生 使用法』を実存的および遊戯的という両面において後ろ楯としていると結論できる。
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