研究課題/領域番号 |
21K00443
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50295458)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 西洋古典学 / ナラトロジー / 古代ギリシア叙事詩 / 古代ギリシア悲劇 / ブラトーン対話篇 / 神話叙述 / ミュートス / 比較作品論 |
研究実績の概要 |
2021年度に研究代表者は基礎的作業としてオルフェウス神話叙述がどのように受容・翻案されたかについて調査し、その成果として書評を執筆し『西洋古典学研究』69号(2021年)に掲載された。また6月30日にオンライン開催された国際学会Kyklos Conferenceに参加し、古代ギリシア叙事詩に関する二つの発表とそれらに続くディスカッションの司会を務めた。科研費で購入した古代ギリシア叙事詩関連文献及びナラトロジー関連文献の調査に基づき古代ギリシア叙事詩作品の神話叙述における他作品へのアリュージョンおよび翻案についてこの国際学会において海外専門研究者たちと意見交換を行い本研究に関する有益な示唆を得た。さらに国内研究者を招いて8月20日に『イーリアス』に関する書評座談会を司会として主催し、その成果を研究誌『ペディラヴィウム』に発表した。また2022年9月に開催予定のオンライン国際学会State University of New York Tragedy Conferenceでは研究代表者がギリシア悲劇作品『縛られたプロメーテウス』におけるイーオーの旅路についてのプロメーテウスによる予言に関する発表を行うこととなっているが、学会開催に合わせて発表者の原稿を集めて出版する計画となっている。そのために研究代表者は、科研費で購入したギリシア悲劇における神話叙述関連文献及びナラトロジー関連文献を用いて『縛られたプロメーテウス』におけるプロメーテウスによるイーオーの旅路予言に関する従来の研究成果を把握し、さらにオリジナルな視点を加えて2021年10月9日に開催されたオンライン国内学会フィロロギカ研究集会にて口頭発表を実施した。その際に国内専門研究者と研究の方向性について意見交換を行い有益な示唆を受け、それをもとに2022年9月の国際学会用に発表原稿を英語で作成して編集者に提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年次にあたる2021年度には当初9月の国際学会International Homer Conferenceでの研究代表者によるホメーロス叙事詩の神話叙述に関する口頭発表を実施することが計画されていた。しかし新型コロナウイルス感染拡大のため研究代表者はこの学会参加を断念した。とはいえ、本研究の基礎的作業としてオルフェウス神話叙述の古代ギリシア・ローマ文学以来の受容・翻案についての調査を行い、その成果として書評を学会誌に掲載したこと、叙事詩における神話叙述のナラトロジー的観点を応用した研究の方向性について2021年6月に研究代表者が参加した国際学会でのディスカッションから有益な示唆を得たこと、古代ギリシア悲劇『縛られたプロメーテウス』のプロメーテウスによるイーオーの旅路予言に関するナラトロジー的な観点を応用した研究成果を国内学会において口頭発表し、その際に得た知見をもとに2022年9月に国際学会で発表するための発表原稿を完成し提出したこと、さらには本研究の第2年次となる2022年度の主要な研究対象となるホメーロス叙事詩における神話叙述へのナラトロジー的観点の応用に関する基礎的な文献調査を開始し、中間的な研究成果として『イーリアス』に関する書評座談会を主催しその成果を研究誌に公表したこと、また2022年度のもう一つの主要な研究対象となるプラトーン対話篇のミュートスへのナラトロジー的観点の応用に関する基礎的文献調査を開始することができたことから、本研究は概ね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年9月に予定されている国際学会での研究代表者による口頭発表の原稿は既に提出され出版の準備が始まっているが、科研費により購入する古代ギリシア悲劇における神話叙述関連文献及びナラトロジー関連文献を用いて従来の研究成果をより詳細に把握し、その国際学会における海外の専門研究者とのディスカッションから知見を得て、『縛られたプロメーテウス』以外の古代ギリシア悲劇作品における神話叙述へのナラトロジー的観点の応用への方向性を検討する。また本研究の第2年次となる2022年度の主要研究対象となるホメーロス叙事詩における神話叙述へのナラトロジー的観点の応用について、科研費によって購入する古代ギリシア叙事詩における神話叙述関連文献及びナラトロジー関連文献の調査を進め、オリジナルな研究成果をまず国内学会において発表することを目指す。また2022年度のもう一つの主要研究対象となるプラトーン対話篇におけるミュートスへのナラトロジー的観点の応用に関して、科研費によって購入するプラトーン対話篇におけるミュートス関連文献及びナラトロジー関連文献の調査を踏まえて研究代表者が属する研究機関の内部研究会において試論的な口頭発表を実施することを目指す。
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