研究実績の概要 |
本研究は近代都市空間における騒音(ノイズ)に焦点をあて20世紀以降騒音ならびに騒音対策に係わる科学技術を介して、都市型住人と都市型共同体との関係の変遷を辿り、そこに潜んでいる近代的主体という幻想と人間機械論の基本問題を析出することを目指し研究所年度を終えた。 1920年代一方で「都市の交響楽」という肯定的言説と他方で「騒音現象」という否定的問題定立とが同時に発生して以来、近代的主体という構図が身体表象的直接性をもってこれまでになく内面化・個体化されてゆく。この社会表象的経緯を複合的に分析することで「都市型騒音現象」という具体から「近代の規範的理念」という抽象の仮構性を抽出することにより騒音と身体表象という従来にない問題設定で「近代」解明を目指す。同時に騒音表象と大衆社会に於ける近代的市民生活が、より広範な科学信仰・進歩信仰を成立させてきた表象基盤構造と根本において同期性・根幹的連動性を有することを批判的に明らかにしてきた。 具体的には都市型日常生活という時空間における上記の問題系列を集中的に体現しているものとして日常的な生活施設・道具(総称としての「モノ」)を取り上げ以下の一連の分析シリーズを出版公開した。 「テープレコーダー」(モノ・マガジン:No.869,2021年4月16日号P.136),「衝突実験」(同誌No.871,2021年5月16日号P.120),「テレビ」(同誌No.872,2021年6月2日号P.66),「スクールバス」(同誌No.874,2021年7月2日号P.112),「スクーター」(同誌No.877,2021年8月16日号P.136),「スピード計測機」(同誌No.880,2021年10月16日号P.136),「ヘッドホン」(同誌No.887,2022年2月16日号P.136),「自動ドア」(同誌No.888,2022年3月2日号P.136).
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