研究課題/領域番号 |
21K00446
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
伊勢 晃 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (00379059)
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研究分担者 |
バンジャマン サラニョン 大阪大学, マルチリンガル教育センター, 特任准教授(常勤) (00739360)
伊藤 洋司 中央大学, 経済学部, 教授 (10384728)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベル・エポック / エスプリ・ヌーヴォー / バレエ / 映画 / アポリネール |
研究実績の概要 |
本研究目的は,フランスベル・エポック期の文学・美術思潮に関する研究を同時代の映画,バレエにまで対象を拡大し「エスプリ・ヌーヴォー」の諸相について実証的に解明することである. 本年度は,諸芸術の動向がもっとも明確に現出している雑誌や新聞における20 世紀初頭の映画とバレエに関する諸言説に関する資料調査をフランス現地で行うとともに,関連書籍の入手や様々な専門家へのインタビューなどを実施し,基礎的資料の整備に注力した.ここで収集した資料を整理し,文壇や画壇,映画産業,バレエを横断するデータベースの作成を現在行っているところである.特に映画とバレエについては両者を関係づける事実(リュミエール兄弟が最初期の映画でバレエを撮影していることに始まり,フェルナン・レジェが実験的映画 ≪Ballets mecaniques≫を製作し,またルネ・クレールがエリック・サティのバレエ≪Relache≫の幕間に上映するために映画≪Entr'Acte≫を撮影したことなど)は枚挙に暇が無いにも関わらず,バレエの変容,発展と新しい芸術として認知される揺籃期にあった映画の関連については,関係性の指摘レベルに留まり基礎的資料に基づいた分析や理論的考察が行われていない.本課題を検討するにあたり,フランス国立図書館で開催された展覧会<L’invention du surrealisme>は文学からシュルレアリスムを俯瞰するという企画であったが,展示の構成や方法および専門家の解説から大きな示唆を得た.フランスでの滞在期間中,フランス以外の国の作品も含め,バレエと関連する当時の前衛映画を多数視聴する機会に恵まれ,映像資料も収集した.また,フランス国立図書館が期間限定でアクセスを許可した特別なデジタル資料も入手することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため,現地での研究機関,国立図書館などの利用制約があり,当初予定していた資料すべての収集が出来なかったこと,現地研究者の来日が不可能となったことなど,世界的パンデミックの影響を受けた.上述の理由で資料の収集,整理に予想以上に時間がかかり,新資料を用いた論文の執筆が少し遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた資料収集を継続すると同時に,構築したデータベースや資料に基づき,バレエと映画の変化の過程を比較・対照することにより,両者の影響関係について学術的検証を行い,論文として公表する.また,当時のロシア映画や映画産業に関する文献を調査し,検討した結果,本研究推進のためにはロシア映画という視点も必要であると思い至った.この点についても専門家からの知見を得ながら考察を進めたい.またフランスの共同研究者を招聘し,最新の知見を得るとともに,講演会,シンポジウムを開催し,研究成果の一端を社会に還元する.コロナ禍のため,万一招聘がかなわない場合には,同時配信システムなどを利用するなど代替策を考えることになる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたフランス人研究者2名の招聘がコロナ禍のため不可能となったために,次年度使用額が生じた.今年度は新たに収集する必要の生じたロシア映画関係の映像資料やバレエ・リュス関係の資料の収集,購入を進めることを計画している.さらに,対面で実施できなかった中間報告会を京都で実施するとともに,研究調査のためのフランスへの渡航と海外研究者の招聘も行う予定である.
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