最終年度 1)18世紀フランスで開花したリベルタン文学のパイオニアであり、後世にも大きな影響を与えたジェルヴェーズ・ド・ラトゥシュ著『カルトゥジオ会修道院の門番であるドン・B***の物語』(以下『ドン・B***の物語』と略す)の翻訳を関西学院大学出版会から出版した(2024年3月)。 2)2023年8月にフランス・リヨンを訪れ、18世紀フランス文学が専門であるレノー氏と翻訳の曖昧な箇所について議論を行った。また、本書のタイトルにもなっている「カルトゥジオ会修道院」のひとつを訪れた。「カルトゥジオ会修道院」は世俗を嫌い、静寂を好むため人里離れたところにあり、『ドン・B***の物語』の主人公サテュルナンが遍歴の末「カルトゥジオ会修道院」の門戸を叩いたことを実感することができた。また、訪問の成果として、『ドン・B***の物語』には歴史的真実が描かれていることも確認できた。 研究期間全体 1)研究期間の多くの時間は翻訳の完成につぎ込まれたが、それとともに本研究課題であるリベルタン文学が18世紀フランス社会およびフランス革命に与えた影響について、「訳者解説」という形で『ドン・B***の物語』に掲載した。リベルタン文学には単なるポルノ文学とは異なり、当時の社会に対する鋭く、激しい批判が描かれている。そのなかで、こうした批判精神こそ、フランス革命へと導くひとつの要素ではないかと問題提起した。リベルタン文学の認知度がまだまだ低い状況ではあるが、こうした問題提起が新たな研究の引き金になることを願っている。
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