研究課題/領域番号 |
21K00449
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
田口 武史 福岡大学, 人文学部, 教授 (70548833)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 身体 / 体育 / グーツムーツ / ヤーン / 汎愛主義 / ナショナリズム / 愛国主義 / 生政治 |
研究成果の概要 |
汎愛主義の教育家J.C.F.グーツムーツは、有能な市民を育成する手段として「体育(Gymnastik)」の開発と普及に努めた。内発的動機に促された運動のための運動によって、個々人それぞれの成長と完成を図るのが当初の目標であった。それは身体の啓蒙と呼ぶべき試みだったのだが、ナポレオンのドイツ占領以降、グーツムーツは右傾化し、F.L.ヤーンとともに国家のための体育を推進するようになった。しかしこれは、政治的変節ではない。来るべき市民社会と国民国家を担いうる有用な身体の育成という汎愛主義体育の目標設定に、すでにパトリオティズムやナショナリズムへと展開してゆく契機が含まれていたのである。
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自由記述の分野 |
ドイツ近代思想
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
グーツムーツの汎愛主義体育は、主に体育学・教育学の分野で歴史的観点から研究されてきたが、本研究は彼の著作の言説分析をおこなうことにより、その思想的特性を明らかにした。 すなわちグーツムーツは、個人の身体活動に公共的価値を見いだし、身体的陶冶が自分のためにも社会のためにもなると考えた。彼の主張に従えば、体育によって我々は個人化と社会化という教育上の二律背反を克服しうる。しかし別の角度から見るとそれは、近代市民の価値観を個人の身体に浸透させる仕掛けにほかならない。 スポーツとナショナリズムや権力との関係が取り沙汰されるとき、近代体育の形成原理となった生政治的志向を意識することは重要であろう。
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