• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

「国民詩人」の共有とディアスポラ―メディアによる「民族」形成機能と文学

研究課題

研究課題/領域番号 21K00451
研究機関東北大学

研究代表者

鈴木 道男  東北大学, 国際文化研究科, 教授 (20187769)

研究分担者 佐藤 雪野  東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (40226014)
藤田 恭子  東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80241561)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード国民詩人 / シラー祭 / ブコヴィナのユダヤ系新聞 / チェコの新聞とロマ / ドイツ系ディアスポラ集団の民族意識 / ディアスポラの新聞
研究実績の概要

19世紀から20世紀中葉に至る中欧の様々な民族主義の勃興と成熟の状況の中で、民族の一員となることを期したディアスポラ集団が持つ新聞が、「民族」概念の形成機関であったことが注目され始めている。新聞は民族の紐帯となる象徴的な文学者とその文学を「国民詩人」・「国民文学」として大衆に理解されやすい形で抜粋して示し、様々な民族祭等の行事をからめて主導的に予告・報道してディアスポラ集団を誘導してきた。
単に民族を謳い上げた文学が存在するだけではなく、それを大衆に媒介し、民族そのものの像を植え付けるための最も有効な装置として、新聞・雑誌という活字媒体が大きく機能していた状況が次第に明らかになりつつある。例えば国民詩人を謳いながら新聞が伝える民族祭において、新聞が属する祝う側は、たとえば詩や散文の訴求力を利用しつつ、実はその背後にいて新聞を武器とする存在―例えばドイツ語圏の場合、国家ではなく、連帯した「教養市民層」―自身とともに、彼らが作品そのものの扱いを操作することで成立した民族観念を祝ったのであり、それがそのままディアスポラ集団に共有されるという現象の理解が、我々の研究の結果進んできた。各研究者が対象とするディアスポラの新聞を実際に掘り起こし、上記のようなそのディアスポラ・アイデンティティとその民族観の形成機を、文学における受容理論等を援用しながら詳細に明らかにするのが本研究であり、当該地域における実地調査・研究を骨子としているが、COVID19関係の事情により、研究の遂行のための現地調査が遅れていた。佐藤は1度現地調査ができたが、鈴木と藤田は、2021年度終了予定ながら1年延長したプロジェクトを優先せざるを得ず、本プロジェクトの調査は本年度にずれ込まざるを得ない。ただし我々はすでに2本の研究を雑誌発表している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

上記のように、我々の研究には現地における調査と、現地の研究者の協力が不可欠である。ネットにる現地の新聞の調査には、おのずと大きな限界がある。
渡航制限が緩んだものの、渡航のための航空運賃がまだ落ち着かず、経費に対する圧迫が大きく、調査は必然的に遅れざるを得なかった。
ただし、今夏、直ちに遅れを回復するべく調査を再開する予定である。

今後の研究の推進方策

ヨーロッパへの入国と現地調査が安全に行いうる状況が成立しつつあるので、まだ調査に赴けていない2分担者は今夏直ちに現地に向かい、調査を行うことができるよう、現地との調整を進めている。新聞は資料としての分量が極めて大きく、古いものに対する閲覧制限が大きく、またネット上への公開も遅れている。従って、現地調査、現地の研究者の協力が我々の研究に占める割合は依然として極めて大きい。

次年度使用額が生じた理由

COVID19のため、旅費が最も大きい額を占める我々の研究計画に支障をきたした。
今夏、遅れを取り戻すべくヨーロッパ出張を遂行する計画である。
物品費は書籍と新聞を中心とするが、我々の研究グループにはかなりの蓄積があり、それを用いて研究を遂行しているが、なお欧州に問い合わせた資料の購入・入手がままならないないものがある。今年度中に鋭意使用できるようにする予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] チェコ・ウクライナ関係に関する一考察―ウクライナ戦争からの避難民に注目して―2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤雪野
    • 雑誌名

      ヨーロッパ研究

      巻: 17 ページ: 77-88

  • [雑誌論文] ズィ―ベンビュルゲンにおけるルターとシラー2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木道男
    • 雑誌名

      国際文化研究科論集(オンライン版)

      巻: 30 ページ: 29-42

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi