研究課題/領域番号 |
21K00452
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
佐々木 あや乃 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60272613)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ペルシア古典文学 / イスラーム神秘主義 / ルーミー(モウラヴィー) / マスナヴィー / ペルシア語修辞学 / データベース / イラン |
研究実績の概要 |
13世紀のペルシア詩人ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー(Jalal al-Din Muhammad Balkhi Rumi, d.1273, 以下慣例に従い「ルーミー」)の神秘主義思想を謳い上げた一大叙事詩『精神的マスナヴィー』の逸話部分に関し、既に完成させていた下訳を丹念に吟味し、さらなる推敲を進めることができた。 また、研究代表者は、前科研「ペルシア語神秘主義詩人ルーミーのマスナヴィー(叙事詩)に関する基礎的研究」以来、イスラーム神秘主義思想を広く民衆に伝えるために生み出されたルーミーの言辞に注目し、深淵かつ広大なペルシア文学の修辞法やイスラーム神秘主義に対する理解を深めるために、信頼のおけるデータベースの存在は必要不可欠と考える。こうした考えに基づき、前科研の途中から着手した『精神的マスナヴィー』全6巻のデータベース作成を、エンジニア班と入力班の協力を得て進めることができた。具体的には、研究者たちの間でも定評ある、ルーミーの没年に最も近い、コニヤ版を底本として入力を進め、既に入力済みの第1巻の校閲を済ませ、新たに第2巻の入力を完了するに至った。これに伴い、2巻までは語彙・語句レベルの検索が全世界で随時可能となり得る環境が整えられたことになる。データベース、とりわけルーミーの『精神的マスナヴィー』のテキストのデータベースの構築は、日本で遅々として進まないペルシア語修辞学研究の一助にもなり得る。 研究代表者がこれまでのペルシア語神秘主義文学研究を通して構築・保持している国際的研究ネットワークを生かしたオンライン会議や学会については、本年度は実施・参加の機会が得られなかったものの、イスファハン大学とは連絡を取り合う関係を維持している。また、新たに在イランのソルーシュ・モウラーナー研究所から、日本におけるルーミー研究についてのオンラインインタビューの申込みがあった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベース作成に関しては、おおむね計画通り順調に進行している。ただ、余裕をもって入力が進められるようにするため、入力班の人数は来年度は増強予定である。また、『精神的マスナヴィー』の逸話部分の和訳についても、推敲はおおむね順調に進んでいる。逸話の数が膨大なため、手を緩めず、また丹念に進めていく所存である。 当初予定していたオンラインによる海外の研究者との会議や意見交換は、双方の予定が合わずに初年度である本年度は実現できなかったものの、ルーミー研究とルーミー学の分野において、イランで精力的に研究活動をおこない、講演会を実施したり、論文集を刊行したりしているソルーシュ・モウラーナー研究所が本研究に関心を寄せてくれ、年度末にオンラインでのインタビューの打診を受けた。令和4年度中にオンラインインタビューが実施される予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍収束の道筋が明確に見えてこないため、当分の間は海外出張を必須としない、『精神的マスナヴィー』の逸話部分の和訳の推敲とデータベース作成に力を注いでいく予定である。逸話部分の和訳については、訳語を慎重かつ大胆に選ぶ姿勢を貫きつつ、丹念に推敲を重ねていく。データベースについては、毎年1巻ずつ着実に入力を進め、校閲も合わせておこなっていく。入力班については、もう1名入力要員を増員する予定で、さらなるスピードアップを図る所存である。 今後は、可能な範囲で、オンラインを利用しての海外研究者との意見交換も実施していきたい。イスファハン大学はもとより、ソルーシュ・モウラーナー研究所との学術交流や研究協力関係を育みつつ、本国イランと世界各国で進められているルーミー研究に関する知見をさらに深める機会を作っていきたい。
|