研究課題/領域番号 |
21K00456
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山根 聡 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (80283836)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウルドゥー文学 / ムスリム・アイデンティティ / 南アジア / イスラーム |
研究実績の概要 |
2021年度は、ウルドゥー文学に見られる郷愁について、特に19世紀後半から20世紀前半にかかけての南アジアのムスリムと西洋的近代との邂逅の動態を、食文化をめぐるウルドゥー文学作品を題材にして学術論文'Muslim Writers and Food in North India, 1850-1920: Nostalgia and Uneasiness' を執筆した。これを国際的な学術誌"International Journal of South Asian Studies" 11,に応募し、査読を経て掲載させた。食文化は、禁忌や断食など人々の日常生活に密着しながら宗教文化が最も顕著に表れる部分であり、特に20世紀初めは、イギリスから新たな食文化(食器を用いた食事や外国人との共食、食材の変化など)に戸惑いつつも、イギリス支配下のなかにあって、ムスリム王朝(ムガル朝)の栄華を回顧する文献がウルドゥー語で数多く出されたことを指摘し、その文献を用いたことによって、近代南アジアのムスリムの宗教的アイデンティティ形成の一端を指摘することができた。すなわち、回顧録を出すことそのものが郷愁を増幅させるものとなっているといえるのである。この点で、研究は当初の計画を上回って進めることができたといえる。なお、現地調査によって更なる文献を探すべきところ、コロナ禍によって出張ができなかったため、入手可能な南アジアのムスリムのアイデンティティ形成に関するウルドゥー語や英語の関連文献を購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の核となる宗教的アイデンティティ形成について、近代における北インドの食文化に関するウルドゥー語文献を用いて学術論文'Muslim Writers and Food in North India, 1850-1920: Nostalgia and Uneasiness' を執筆し、これを国際的な学術誌"International Journal of South Asian Studies" 11に査読を経て掲載させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍が落ち着けば、現地調査によって更なる文献を探し、南アジアのムスリムのアイデンティティ形成について食文化以外の観点から検討していきたい。場合によっては、研究者の招へいも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍のため、海外での資料収集が実行できなかった。このため、物品費として入手可能なウルドゥー語文献を購入したものの、次年度には繰り越した額を現地での資料収集に充当させたい。
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