研究課題/領域番号 |
21K00456
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山根 聡 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (80283836)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 南アジア / ウルドゥー文学 / 郷愁 / イスラーム文化 |
研究実績の概要 |
2022年度は、コロナ感染状況が緩和したことで、2023年3月にパキスタン最大の書店・出版社であるサンゲミ-ル出版社の経営者アリー・カームラーン氏を大阪大学に招へいし、ウルドゥー文学におけるノスタルジアに関する出版状況について意見交換した。アリー氏によれば、近年になってノスタルジアを主題とした書籍の再版が少なからずなされていて、それが海外の読者間に増加傾向にある点など、現在の最新の出版傾向を知ることができた。この招へいに引き続いて、筆者自身がパキスタンのパンジャーブ大学に出張し、オリエンタルカレッジにおいて本研究課題に関する報告を行うとともに、現地の研究者との意見交換を行った。その際、19世紀末から20世紀初めにかけてのウルドゥー文学作品にみられる社会生活に対するノスタルジアについての貴重な書籍を収集することができた。さらに、本研究課題に基づいた研究発表を2回(上智大学とオンライン)行い、19世紀末に刊行されたウルドゥー語の雑誌の分析を行った。先行研究では、この時代に郷愁を描いた書籍が数多く出版されるとともに、ヒンドゥーとムスリムがそれぞれの宗教文化に対する郷愁や「純化」を志向したために、両者間の対立が激化していったとされているが、今回扱った1884年にラーホールから刊行されたウルドゥー語の雑誌は、ヒンドゥーの牝牛保護運動を目的とした雑誌ながら、ヒンドゥーとムスリムが歩み寄りを見せようとした動きなど新たな点を指摘した。また、2年前に書籍として出版されたノスタルジアに関する論文が中国語に翻訳され、2022年12月に台湾から刊行されたことは、わが国における学術研究を英語以外の言語で紹介することができた点で成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題に関する研究発表を2度行い、外国出張によって貴重な資料を得ることができた。また、過去の論文が中国語に翻訳されて刊行されたことにより、現在進めている研究を中国語圏の研究者に知らしめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までに収集した資料を精読し分析することで、日本南アジア学会等でインド・ムスリムの生活空間に対する郷愁をテーマと発表を行う。また、その内容を中心に、パキスタンでさらなる資料を得るための調査出張を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度にはコロナ禍の規制がまだ残っており、外国出張等が容易に再開できる環境になかった。そこで、次年度に複数のウルドゥー文学研究者を招いて国際会議を開催する計画を立て、招へい研究者の旅費等に用いることとした。
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